年別アーカイブ 2010年

直目

沖縄はアジアゲートウェイになるか

アジア経済の成長に伴ってアジアとの物流拠点が那覇空港になりつつあるようだ。
現在、わが国産業の生産・流通拠点などはアジアへ移行していくことは避けられない状況にある。企業にとってもアジアの主要都市が那覇空港から4時間以内でスピーディに輸送できるという地理的優位性を持ち、物流にかかるコスト面やリードタイムなどにメリットが多い。

このようなことから、国内製造業も沖縄に工場を新設するのがトレンドになりそうだ。すでに進出している企業も出てきている。
日本で唯一、沖縄は亜熱帯。
たとえば精密機器・部品などは、温度・湿度に影響されやすいので、アジアの気候に合わせた技術開発をもって生産したほうがより合理的であると思われる。
これは地域を活性化し、社会貢献に繋がることは間違いない。

「この部品が足りない! このままではラインが止まるからすぐに送って欲しい」等の急を要する精密機器部品など、必要なものを素早く輸送することは以外と重要である。
このように顧客のニーズに対するクィックレスポンスは会社の信用度を増すし、国際競争に勝つ条件のひとつでもあろう。

沖縄がアジアゲートウェイになることを期待したい。

2番じゃダメなんです

ちょっと前まではマシンのトレンドといえば、高品質な多機能マシンだった。ところが、最近は海外向けの“使わない機能を省いた”シンプルマシンの売れ行きも好調だという。
昔の日本が辿った道を新興国が歩いている(小走り?)している状況にも見える。

戦後の高度成長期を支え、日本製品の国際競争力を高めたのは工作機械だ。ハイクオリティな部品や金型の数々はマザーマシンが産んだ。

今年のショッキングなニュースのひとつに28年間首位を守り続けていた日本の工作機械の生産額がドイツにも抜かれ3位に転落したというのがある。トップに躍り出たのは成長著しい中国だが、日本が決して安価な中国産との価格競争で敗北したというわけではない。一昨年9月に起こった米国の金融危機に端を発した世界同時不況の影響をモロに受け、設備投資が減少したことと国内市場の縮小が主な要因だ。

実際、アジアで人気があるのは日本製のマシンだ。価格に惹かれて中国製を購入したベトナムあたりは最近になって、すぐにガタがくる中国製のマシン離れが起きていると聞いた。いくら騙し騙し使っても限界がある。成長が見込める中で生産しても、しょっちゅう故障されてはイラついてくるのが正直なところだろう。少々値段が高くても財布が潤えば耐久性の優れた日本製のマシンに買い替え、生産能力を高めたいはずだ。

日本製の良いところは、耐久性に優れ、加工精度が長く維持できるところ。
急速な発展を遂げるアジア地域は、ここへきて情報家電や車などがグローバルに市場を駆け巡っているが、優秀な企業の多くは日本製の工作機械を使用している。

ところで、工作機械同様ものづくりの基礎をつくる金型業界も国内市場の縮小とユーザーの海外移転、想像を上回るコストダウン要求で苦しい局面に立たされている。

これらの業種が競争力を失うということは、われわれの生活を豊にするための“モノ”に陰りが出ているわけで、日本経済が弱体化していくことを意味している。このまま黙って指を咥えて新興国の追い上げを見ているわけにはいかないのだ。

現在、残念ながら国内市場の縮小は避けられないが、「売る」という観点からいくと、地球上には需要はある。先述のとおり、競争力をつけてきた海外企業が欲しているのは性能が良くクオリティの高い日本製だからだ。

このようなチャンスをモノにするためには資金も必要というもの。特に光る技術は持っているけれど、資金調達が厳しい小規模企業に対しては十分配慮して欲しいものだ。
“貧すれば鈍する”という嫌な言葉があるが、発展性が見込めたり、優秀な企業が鈍しないためにも、海外販路の開拓や、技術開発支援等に対してバックアップも必要であると強く感じている。

現状は、大・中小企業という企業規模だけの“くくり”の中で、優秀な技術を持つあるいは開発努力をしている企業と、そうでない企業がゴッタになってしまって、全体的に沈んでしまっているという現象が起きているのが残念でならない。

農業は未来産業だ!

最近、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の参加について議論がなされている。
自由貿易に二の足を踏んでいる問題のひとつに農業保護がある。
人口が減少している日本にとってTPP不参加は、果たして国益になるのだろうか。

輸出産業にとって、TPP参加はメリットが大きい一方、農業においては、安価な食糧が大量に入ってくることによって、“生き残り”が危惧される。農業は保護しなければならないという考えが根付いているようだ。

現在、日本の農業は内需に頼るしかないが、人口が減少する一方の日本において、国内消費ばかりに目を向けても少しも国益にならないと感じている。

日本の食べ物は非常に美味しい。米も日本酒も果物も野菜も。美味しくて、しかも安全である。世界最高水準だと言っていい。こんなに美味しくて安全な食料は世界から見てもそう滅多になく、殺菌作用の高い日本のハーブ、「シソ」だって、ヨーロッパの洒落たハーブに負けてはいない。

大量に海外から安く食糧が仕入れられて農家が困る理由のひとつに、“消費者が安価な海外モノの食材に走る”というのがある。

果たして本当にそうだろうか。

飽食の時代を経験している日本人は他国に比べ平均して食にうるさく、口が肥えている。
肥えた口はそう簡単に落とせないものだ。ちなみに個人的だが、某国の食材はいくら安くてもなんとなく怖い。同じものなら、少々高くとも美味しくて安全な方を手にするだろう。

農家はもっと自信を持ってもいい。農業に誇りを持って、若い労働力を増し、「ジャパニーズ・ブランド」を全面に押し出し、世界に売りまくることを視野に入れてもおかしくない。

そのためには、農業を法人化し、営業マンを育て、競争力を生み出していく。
農業は保護の対象ではなく、「未来産業」にする。それをバックアップするための技術は日本にたくさんあるのだ。

たとえば食材を高品質のまま安定して各国に流通させるための冷凍・冷蔵技術も優れている日本のこの優秀な技術を活用しない手はない。工業と農業が連携して世界に向かって食材を売り出す仕組みを議論してもいいんじゃないかと個人的には感じている。

技術は進歩する。良いことは誰かがマネをする。追いつかれたら終わりじゃなくて、次々と斬新なアイディアと培われた技術を持って“時流を売りぬいていく”。この考えはなにも工業に限ったことではない。農業ももっと「売る」に貪欲になってもいい。

工業も戦後、保護されていたが、その後自由化されて国際競争力をつけてきた。製造業はいつの時代も時代に翻弄されながらやってきたのだ。農業も同じように保護から脱皮して新たなチャレンジをすべきだと思っている。

日本の農家も高齢化が著しい。大改革をするチャンスだ。
JAも農業を法人化してグローバル化をするための支援・推進機関として機能をして欲しいと個人的には思っている。

希少資源問題と日本経済へのダメージ

最近、希少資源であるレアアースが大きな問題として取り上げられている。

希少資源といえば昨年6月、USTR(米通商代表部)は中国がレアメタルの輸出を制限し、国際価格の上昇を招いているとしてWTO(世界貿易機構)に提訴した。中国は国内の消費量が増加して輸出を制限したのか、政策的にタイトにしたのか謎なのだが――というより、このような問題は将来ずっとついて回る予感がする。ひょっとしたら希少資源を中国が自国で消費する可能性も十分にあり得えるのだ。

レアアース問題といえば、今年の正月早々に同じようなニュースがあった。中国はハイテク技術に欠かせないレアアースの輸出、生産の管理を強め、輸出許可枠を4年で40%も減らすと発表したのだ。40%といったら半分に近い。正月早々、嫌なニュースだと感じたのを覚えているが、今のように大きな問題にならなかったことを不思議に感じる。

これに関連することがたびたびあった。10年も15年も以前から中国に意地悪をされるたび、国内は大騒ぎした。ところが、各企業が中国以外のレアメタルの資源開発や代替開発を叫んでいたにもかかわらずこの10年間、あんまり進んでいないのを残念に感じる。ちなみに、ある資源開発の会社は、1000億円あれば、他国で開発できると以前から訴えているようだ。

中国が過去、レアメタルをタイトにするたびに、国内企業は製品の値上げ問題が浮上し、景気の悪い時に企業は、涙ぐましい賃金カット等のコスト吸収をしてきた経緯がある。
結局、これらの問題を考慮すると、当局は備蓄することしか能がなかったようにも思える。

このままいくとハイテク産業のみならず、ハイブリッド車(HV)の製造も危なくなる可能性がある。延いては日本経済へのダメージも相当なものになると感じる。すでに希少資源の在庫も怪しくなっている。

ところで、最先端技術の製品やそれらの開発に欠かせない材料はレアメタルであり、ほとんどの製造業がレアメタルを必要としているわけだが、旺盛な需要は日本だけではない。経済発展が著しいBRICsをはじめとする開発途上国もハイテク産業の成長を睨み著しく需要が拡大している。

世界中の製造業にとって必要不可欠なレアメタルの需要は、2050年までに現在確認されている埋蔵量の数倍を超えるものと予想されている。これは大変深刻な問題であり、資源リスクを回避するには「うまく使うこと」、「替わりを探すこと」だと言われている。

2007年には、内閣府、経済産業省、文部科学省、JST(科学技術振興機構)、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、府省を横断して「元素戦略プロジェクト」、「希少金属代替材料プロジェクト」を国家レベルでスタートさせているが、このプロジェクトをもっと大々的にPRできないものかと思う。

すでに1950年からレアメタルの一種であるタングステンを代替する工具材料の研究は行われていたようだが、炭化チタン系サーメットを使う研究開発が当時より行われ、上記のプロジェクトでもサーメットの弱点である不均一性を追求している。

このプロジェクトはこれまでに、ジルコニウム、モリブデン、窒素などの元素を加えて混合し、高性能な熱処理で、従来よりも硬くて靱性に優れたサーメット材料を開発している。特殊な顕微鏡やコンピューターによるシミュレーションや、さまざまな設備と技術を駆使し、材料の組織をナノレベルでコントロールしたことにより、良い成果が出せるようになったようだ。

ちょうどこのプロジェクトについて1年前に書いたことがあるが、私はその後の発展がとても気になっている。

いずれにせよ、これらの希少資源の代替品の開発等は、民・官あげて“実用化”を加速すべきである。

日本の技術開発力は強い。この技術の進歩を止めないようにするには優秀な“研究者”を育てる土壌が必要だと強く感じる。

資源のない日本。企業も国も目指す道は“科学技術創造立国”しかない。

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