創業100周年を機に北川鉄工所がカンパニー制導入 工機事業部はグローバルハンドカンパニーへ! ~新たな飛躍とものづくりへの思いとは~

 本年3月、100周年を迎えたことを機に北川鉄工所(会長兼社長=北川祐治氏、本社:広島県府中市)は、素形材事業、産機事業、工機事業がそれぞれの優れた技術を発揮し、より強靱なKITAGAWAブランドを構築するため、4月1日付けでカンパニー制を導入した。
 素形材事業本部は、キタガワ マテリアル テクノロジー カンパニー(Kitagawa Material Technology Company、略称:KMT)に、産機事業部は、キタガワ サン テック カンパニー(Kitagawa Sun Tech Company、略称:サンテック)へ、工機事業部は、キタガワ グローバル ハンド カンパニー(Kitagawa Global hand Company、略称:グローバルハンド)と生まれ変わり、新たな取り組みを実行している。

 今回、KITAGAWAの中核を担うグローバルハンドに注目し、藤本 一 (ふじもと ひさし)執行役員・キタガワグローバル ハンド カンパニー社長にものづくりへの思いや営業方針、具体的な取り組みと未来像についてお話しを伺った。

100年続くKITAGAWAのチャレンジ精神

 ―カンパニー制が導入され、工機事業部はキタガワ グローバル ハンド カンパニーへと生まれ変わりました。大胆な改革を実行されたと思います。その背景について教えて下さい。
 藤本 世界中が大きな転換期を迎えています。そこで体制の見直しの必要性を感じた北川会長が、“成長”をキーワードに改革を進めました。カンパニー制の趣旨とは、成長を志向することです。われわれが想像する以上に世の中の流れは速く、その流れに乗りつつも、それ以上の速さで次の一手を打つためには、事業サイクルのスピードをさらに上げていかなくてはなりません。意思決定も従来以上にスピードアップが求められます。責任と権限を明確にし、よりスピーディに経営の効率化を実行していくことを目的として、今まで北川会長が決済していたものの多くは、それぞれのカンパニー長が決済していくことになります。
 ―100年という歴史にも裏付けられていますが、成長していく、というところに貴社のたくましさを感じます。グローバルハンドの社長として思うことはありますか。
 藤本 例えば創業者の思いなど、本質的なものを忘れない中であっても、時代の流れとともに変化するものを取り入れ、新しく変化を重ねていかなければ、と思っています。不易流行の精神。なんでもかんでも変えて良い、ということでもありません。今年3月に創業100周年記念式典を社内で執り行いましたが、改めて過去を振り返る機会があり、われわれの諸先輩たちのご苦労を知ることができました。
 ―どんなに時代は流れようとも変えられないものもあるということですね。
 藤本 われわれは創業以来、ものをつくることにこだわりを見せてきました。もともとは操船用の木製滑車の製造からスタートしています。木製滑車に使うための金属製のベアリング関係は外注していたのですが、景気の波により納期が不安定だったこともあって、自社でつくったほうが良いだろうと内製化をし、鋳物の事業も始めました。それがどんどん派生していったのです。100年もの間、一貫してものをつくってきたのですから、そこに強みがあると思っています。われわれの先輩方が培ってきた“ものをつくるための技術”へのこだわりと、“メーカーとしての責任”、ここは絶対に変えられないと考えています。
 ―組織を盛り上げるための秘策はありますか。
 藤本 KITAGAWAブランドをより強化していきたいと考えています。様々な業界のお客様に、われわれの商品は評価を頂いていると感じているのですが、商品の領域と供給する地域をさらに拡げていかなければと思っています。競合他社でも素晴らしい商品を持たれているところもありますし、最近は韓国や台湾も力を付けてきているという危機感を感じています。そのため商品アイテムの強化に注力していきたい。最終的にわれわれの商品を使って頂くお客様に「KITAGAWAの商品を使って良かったよね。」と喜んで頂けるような商品を安定して提供し続けられるようにしていきたいというのが一番の思いです。
 ―競争力と営業力の強化をするにあたり、社内で徹底していることはありますか。
 藤本 営業の前線がお客様に一番近い。「新商品を育てるのは営業の役目だ。育てるためには、“どんな商品を相手は求めているのか”、というアンテナを常に営業は張っていなければならない。」という考えのもとで行動しています。これは、北川会長が常日頃から口にしている言葉ですが、お客様の状況をよく理解し、何を望んでいるのか。われわれが狙うべき業界の展望等をキャッチアップするためには、情報を受け取るわれわれ側の感性も重要な要素になっていきます。営業担当者はお客様の要望を集約していき、商品開発の形にしていく重要なポストでもあり、お客様とのファーストコンタクトは営業担当者が担いますから、担当者の情報を収集する力、感じ取るアンテナ、感性は目には見えませんが、そこを高めていかなければ、と感じます。

“守りから攻め”へ事業体質を変換

ロボットハンドにはチャックで培った“ものを把握する技術”が生かされている。
ロボットハンドにはチャックで培った“ものを把握する技術”が生かされている。
 ―組織変更に伴い、グローバルハンドの中で新しい部署を設置しました。その目的を教えて下さい。
 藤本 今回、技術部の中に開発課という部署を新たに設置しました。この部署は、今ある商品のラインナップをどう強化するか、といった従来路線の開発検討をしていく部署とは異なり、新商品の開発に没頭するための組織です。以前の工機事業部でも様々な商品の開発に取り組んできましたが、展示会に出展しては消えて・・・ということを繰り返してきました。組織変更を機に“不退転の覚悟”で、商品開発を一つのキーワードにしたいと思っています。
 ―強い決意ですね。商品開発への並々ならぬ意欲を感じます。
 藤本 われわれは機械メーカー等の補機メーカーですから、機械メーカー等からのニーズに応えた開発ももちろん行っていく一方で、もっと能動的に、自分たちでアグレッシブに開発を進めていかなければならないと考えています。新しい需要先など市場の探索も含めて行う開発課は、新組織の目玉であり、重要な部署です。
 ―開発部隊、攻めていますね。現在、注目している産業はありますか。
 藤本 勢いの良いロボット産業に注目し、現在、ロボットハンド等のアイテムを強化しています。今後、高能率化を目的とした最先端の工場を構築するにあたり、AI化、IoT化、自動化、省人化、さらには無人化が鍵となりますが、それにはロボットが必要になりますから、われわれのロボットハンドが現場に安心と安全をもたらし、活躍できるよう注力していきます。
高能率化を目指した最新工場の構築にはロボットの活用が鍵となる。現場に安心と安全をもたらすロボットハンドは重要な役目を握る。
高能率化を目指した最新工場の構築にはロボットの活用が鍵となる。現場に安心と安全をもたらすロボットハンドは重要な役目を握る。
 ―貴社は4月に英文のHPを開設し、グローバル展開にも力を入れ、世界レベルで競争力を高めていますが、KITAGAWAの強みについてどうお考えですか。
 藤本 品質の高い商品を安定的に国内外に供給できるところでしょうか。国内外ともに活動のステージを拡大していることもあり、国内はもとより海外でもサービスの体制が整っていることも優位性のひとつだと思っています。
 ―北川会長からバトンタッチされたことで印象にあることはありますか。
 藤本 守りから攻めへ事業体質の変換、前を向いて成長すること。足元である国内をしっかり固めること。事業規模を拡大するためには、海外に目を向けること――でしょうか。

社名に込められた思い。~グローバルハンドは手段を提供する会社~

 ―ものをつくる製造現場とともに営業面でも強化していくのですね。
 藤本 われわれの商品を使って頂くお客様に評価されるものづくりを目指していますが、技術の特長、商品の優位性など、代理店、特約店、販売店のみなさんがKITAGAWA商品の魅力を現場にお伝えしてくださるからこそ成り立っています。技術開発は常に進化し続けなければなりませんし、われわれの技術はお客様企業の成長、経済の発展に寄与しなければなりません。放っておいても商品が売れるということはありませんので、メーカーであるKITAGAWAと流通のみなさんが一体となって製造現場に貢献することはとても重要だと考えています。
 ―“グローバルハンドカンパニー”という名前の由来を教えて下さい。
 藤本 副社長の北川和紀が提案しました。実はこの社名にわれわれの思い入れがあるんです。ハンドを直訳すると“手”。ワークを掴む、チャック、バイス、ロボットハンドなどが連想できますよね。手を日本的に考えると、“手段”という発想にもなります。つまり、提供するのは、チャック等のものを掴む商品=“手”だけではなく、トータルとしてのシステム、つまり“ものづくりの手段”を提供できる事業体に成長していきたいとの願いが含まれています。世界のものづくりを掴みにいく、世界中のお客様に自信をもってKITAGAWAブランドをお届けする、というわれわれの気概がこの社名には込められています。

▼北川鉄工所ヒストリー紹介動画▼

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