三井精機工業が「MTF(三井テクニカルフェア)2017」を開催 新マシン等見所満載! ~工作機械工場にみる精度へのこだわり~

今回は、「ものづくりの原点 ~更なる高機能・高精度の挑戦」をテーマに、コンプレッサからは新開発のインバータコンプレッサ「ZgaiardXシリーズ」中型機をメインに展示、工作機械の目玉となった新製品群は、Precision Profile Center「PJ812」を筆頭に、5軸制御立形マシニングセンタ「Vertex55XⅢ」、横形マシニングセンタ「HPX63Ⅱ」、ジグ研削盤「J350G」が工場内で展示されていた。また、トレンドの自動化・IoT化を視野に入れた取り組みも提案しており豊富な見所だった。工場内では貴重なきさげを体験するコーナーを設置するほか、テクニカルプレゼンテーションでは、コンプレッサや工作機械の紹介、日本レーシングマネージメントの菅原義正会長の特別講演も企画され、来場者を楽しませる工夫が溢れていた。
(写真:三井精機工業提供)
工作機械工場の徹底ぶりが凄すぎる!

まずは、“精機棟”の空調と基礎について。ここは工作機械の主要部品の加工、主軸・テーブル棟のユニット組立、機械組立を行っており、幅140m、奥行き100mの広さを有し、全館完全空調している工場である。空調は設定温度に対して±0.4°の制御ができる。垂直方向、水平方向ともに温度差がほとんどないという徹底ぶり。モノをつくるモトとなる、マザーマシンをつくるには、振動は御法度。同社では、約3mおきに合計1700本のパイルと平均1mのコンクリートを入れて強固な基礎にしている。しかも建物部分と機械組立部分の基礎が完全に分離しているため、クレーンの振動が機械組立に影響しないつくりである。また、同社では出荷室を設けている。この理由は、外気の流入によって組立工場内の温度が変化するのを防ぐとともに夏場に機械が結露し錆びるのを防ぐためだ。
精機棟の環境対策についても触れておこう。
同社では、精機棟内証明(全346棟)を水銀灯からLEDに変更している。1棟あたりの消費電力は水銀灯の400Wに対してLEDは147W。したがって水銀灯と比較した省エネ効果も高く、年間消費電力量は約1/3、Co₂削減量は185t。また、LEDに変更することで照明からの発熱量が減少し、空調全体に占める証明の負荷比率が20%から10%へと減少したという。
今後の予定は精機棟の屋根に太陽光発電パネルを設置するとのこと。出力150kW/h。60tのCo₂を削減できる予定だ。パネルの断熱効果により、空調電力の削減も期待できる。

三井精機のきさげのこだわりは精度へのこだわりだ!
工作機械の真直度、平行度、直角度、平面度などの基本精度を決定する重要な要素に“きさげ”がある。同社によると、「工作機械の部品精度は、それを加工する機械以上のものにはならない。加工機よりも良い精度を求める場合、そこに人の手による“修正”が必要になる」とのこと。
同社はこの工場内で生産している全ての機械に対しきさげを行っているが、マシニングセンタできさげを行っているメーカーはごくわずかである。「これだけ丁寧に行っているのは限られたメーカーしかない」と自信たっぷり。
同社によると、きさげの目的は2つ。1つめは摺動面の精度(真直度、平行度、直角度)を出すこと。テーブルやパレットの平面度を出すこと。2つめは物と物の接触する部分の“アタリ”を出し、締め付け時の“ストレス”をなくすこと。摺動面のきさげはまっすぐに仕上げるわけでなく、全体にわたって緩やかな凹型形状や凸型形状に仕上げることによって、実際にテーブルやコラムが載ったときにまっすぐ動く仕組みなのだ。
こうした徹底したマシンのつくり込みで生まれた新マシンが下記のとおりである。
(ここまでの写真は全て三井精機工業が提供)
新開発の工作機械群 「PJ812」は社長のキモ入りマシン


HPX63の高精度、高剛性を継承した「HPX63Ⅱ」は、角スライド機でトップクラスの早送り速度枚分54m、加速度0.5Gを達成。設置スペースを従来機と比較して14%も削減していた。難削材を高能率加工する実力もさながら、アルミの高速加工まで豊富なスピンドルバリエーションも優位性のひとつだ。主軸熱変位補正を装備し、嬉しいコールドスタートが可能(オプションのビルトイン主軸)。
砥石自動切込みストロークを従来機の2mmから53mmに拡大し、異径穴の連続自動加工範囲が飛躍的に拡大した「J350G」。タッチパネル式15インチLCDの採用と同社独自開発の対話型研削ソフト「G-MAPS」の組み込みが特長。クーラント装置を含めた全体の設置スペースを、占有面積比では従来機の約50%も削減し、コンパクト化を実現している。