日工会 新会長に花木義麿オークマ社長 「世界最高の工作機械を供給して、日本と世界のモノづくりを支えていく」

写真左から山岡氏、森氏、横山氏、花木氏、牧野氏、中村氏、稲葉氏
写真左から山岡氏、森氏、横山氏、花木氏、牧野氏、中村氏、稲葉氏
日本工作機械工業会が5月23日、都内のホテルニューオータニで通常総会を開催し、花木義麿オークマ社長が新会長に就任した。副会長の牧野二郎牧野フライス製作所社長、森 雅彦森精機製作所社長、稲葉善治ファナック社長、山岡靖幸神崎高級工機製作所社長、中村健一中村留精密工業社長は留任。

花木会長が総会後の懇親会であいさつした概要は次のとおり。


世界最高の工作機械を供給して、日本と世界のモノづくりを支えていく

あいさつする花木新会長
あいさつする花木新会長
さて、この度、新理事全員のご推薦を頂き、横山前会長から、日本工作機械工業会会長のバトンを引き継ぐこととなりました。
伝統ある会長職の責任の重さを痛感致しますとともに、大きなやりがいと使命感を感じております。先人達が築き上げてこられた長い歴史を受け継ぎ、新時代でのさらなる飛躍を期して、新たな礎を築くことが、会長たる私の重要な役目であると考えております。この大任を果たし、業界全体の発展を図るために、粉骨砕身、努力致す所存でありますので、会員の皆様をはじめ、関係ご当局並びに関連業界の方々のご指導とご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

すでにご承知置きの通り、平成24年度の工作機械受注額は、前年度比13.1%減の1兆1,398億円となり、3年連続で1兆円を超えたものの、3年ぶりの減少を余儀無くされました。
一方、同年(暦年)のわが国工作機械の生産額は、前年比2.6%減の158.8億ドルで、受注動向と同じく3年ぶりの前年割れとなりましたが、そのシェアは23.5%を占め、3年連続で、世界第2位の座を堅持しております。

このように、受注・生産状況は、昨年後半以降、一時的な調整局面に入りましたが、昨年末の新政権発足を機に、日本経済の再生に向け、事業規模で約20兆円の緊急経済対策が実施されたほか、永らくの課題であった超円高の是正と、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉への正式参加がようやく現実のものとなるなど、業界を取り巻く環境には、明るい兆しが見えてきております。

翻って、世界の工作機械産業に目を転じますと、新興諸国では、工作機械の急激な需要増に伴い、生産だけでなく、技術レベルにおいても急速な向上が見られます。先のCIMT展でも、中国メーカー製の同時5軸加工機や自動化システムが既存技術として展示されておりました。日本、中国、台湾、韓国で世界生産の64%弱を占めるに至った今日、工作機械産業においても、かつての欧米列強からアジア新興地域の台頭へと時代が移り変わっています。

加えて、技術・労働面でも、少子高齢化の進展と団塊世代の定年退職に伴う若年労働力の不足や、技術・技能の継承問題も顕在化するなど、わが国工作機械産業を巡る経営環境は、大きな転換期を迎えております。

このような時期に当たり、わが業界としては、時代の変化に即応しつつ、世界最高の工作機械を供給して、日本と世界のモノづくりを支えていかねばならないと確信しております。

そのためには、昨年5月の「工作機械産業ビジョン2020」で示された、産学官連携の強化、標準化戦略の強化、JIMTOFの求心力の強化、人材の確保・育成策の強化、を強力に推進することが必要です。

当然、どの課題も非常に重要ですが、私としては、6年間、技術委員長を務めさせていただいた経験も踏まえ、特に、産学官連携の強化と、標準化戦略の強化の2点に注力して参る所存です。

産学官連携の強化につきましては、諸外国では、ドイツなどの欧州諸国や中国も、国を挙げて、工作機械の研究開発を強力に推進しております。これに対し、日本では、平成19年を最後に、政府による工作機械技術の研究開発支援が行われていないのが現状です。
申すまでもなく、工作機械は、製造業はもとより、全産業・経済を支えるインフラとしての重要な役割を担っていることから、工作機械の競争力強化は、産学官が協同して当たるべき課題であると考えます。この共通課題について、産学官が手を取り合って取り組むためには、日工会がリードして、未来の工作機械の技術を創り出す「知識創造の場」を設け、3者の連携を緊密にしつつ、工作機械の未来技術を生み出す「加工システム研究開発機構」、加工システム研究開発プロジェクトなどを立ち上げることができればと考えております。

次に、標準化戦略の強化です。
今日、工作機械の生産は日・中・台・韓で世界の64%弱を占め、世界の工作機械市場において、アジア勢の存在感は大きさを増しております。しかし、今後とも、日本を中心としたアジア勢が主導権を握り続けられる保証はまったくありません。
スポーツの世界では、スキージャンプや柔道のルール変更で「してやられた」という苦い記憶があります。逆に五輪種目からレスリングが外れ、テコンドーが残ることもありました。

モノづくりの世界でも、同じことが言えます。日本の技術は超一流と内外で高く評価されておりますが、欧米がリードするルールや国際標準のもとでのゲームで苦戦を強いられています。「技術で勝って事業で負ける日本企業」とも言われるゆえんです。
アジア勢は、世界の工作機械産業の中で、中核的存在になりつつありますが、欧米が先導する安全性や環境性能の基準次第では、築き上げてきた牙城が一気に崩れるというオセロゲームに似た大逆転のリスクが潜んでいます。

これまで工作機械の精度評価、安全性や環境性能の基準は、欧州連合が中心に進めてきました。今こそ、世界で存在感を増しているアジア諸国と手を携え、日本が工作機械の国際標準をリードしていかなければなりません。
そのためには、例えば、ISO等の国際標準化活動において、わが国の発言力を高めるべく、中国、韓国、台湾のISO関係者との定例国際会合を継続・拡充するなどして、アジアにおける標準化協力体制を強化していきます。

加えて、今後は、若手研究者を始めとするISOスタッフを養成し、国際会議で活躍できるような人材を育成していきたいと存じます。これらの活動が実を結び、日本発の国際規格が次々と生み出され、日本発のデファクトスタンダードを実現したいと思います。

一方で、各企業内では、部品の規格化・標準化を進めることが重要です。企業内標準化の推進は、製造コストや部品点数の削減に繋がり、各メーカーの競争力強化に大きく寄与することから、業界を挙げて積極的に推奨して参ります。

また、世界の工作機械市場における日本のプレゼンス向上には、JIMTOFの情報発信力を高める必要があります。
JIMTOFについては、以前から、欧州のEMOショーやシカゴ・ショーに比べて国際性において見劣りすることが指摘されております。JIMTOFの情報発信力を高めるために、まずは、他の関連団体とも連携しつつ、ビッグサイトの拡張を関係各所に働きかけて参ります。そして最大出展者団体でもあります日工会としては、出展会員メーカーに対し、各社が誇る世界トップクラスの最新技術について、JIMTOFでの初披露を促すなど、魅力あるビジネスショー、世界トップの技術ショーとしての地位を確立して、海外来場者の増加に結び付けていきたいと考えます。

さらに、将来の日本のモノづくりを支える人材を育てていきたい、という思いから企画した「工作機械トップセミナー」についても、招待学生の枠を拡大するなどして、一層の充実を図り、工作機械産業の重要性を、学生諸君に深く浸透させていきたいと存じます。この結果、参加された学生が、業界の次の世代を担う人材や、日本の工作機械の良さを充分に理解したユーザーへと成長してくれれば望外の喜びです。

このほか、国際交流の促進、環境問題への積極的な取り組み、広報活動の強化など、幅広い事業を展開していきたいと考えます。

工作機械は産業の競争力を支える基盤

宮本聡大臣官房審議官(製造産業担当)
宮本聡大臣官房審議官(製造産業担当)
来賓を代表して宮本聡大臣官房審議官(製造産業担当)が、「日本の工作機械産業は日本のものづくりの極みであります。工作機械産業ビジョン2020にある産学官連携、人材育成などの課題については、今後、責任を持って経済産業省として皆様と一緒に実現に向けて努力していきたいと思います。皆様方は日本産業の競争力を支える基盤となっています。現在、工作機械の競争は熾烈を極めておりますが、皆様方の技術はさらに上の領域、難削材加工分野に力を持っておられますが、これがひいては自動車や航空機などの競争力も高めることになります。そういう意味では、皆様の存在は日本の製造業の中核を成すものですし、責任もあろうと思います。国内需要はもとより、中国、欧州も回復傾向が見られております。超円高の急速な是正で、おそらく皆様が立てられた年間受注計画も達成できるのではないかと期待しています。さらに中長期的にいえば新興国において、皆様方の本来取るべき市場は拡大していくと思いますし、TPPへの参加表明、骨太のFTAの交渉も始まっております。結果はこれからですが、これが始まったことは非常に画期的なことです」とあいさつをした。

横山元彦前会長(ジェイテクト会長)の発声で乾杯をした。

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