シェアアップは正鵠を得た証! ハイスドリル世界一を誇る不二越

1928年12月、富山市で工具メーカーとして創業した不二越は、材料から商品までの一貫生産のもと、高品質な材料をベースに、工具、ベアリング分野へと業容を拡大してきた。今では機械加工、ロボット、機能部品、材料事業をあわせ持つ多様なソリューションを提供できる総合機械メーカーである。工具に始まって工作機械・ロボット・ベアリング・油圧機器、材料までを手がけている企業は世界にはない。

近年、「材料革命」とも呼ばれるほど使用部品の材質も変化し、生産工程では厳しい品質管理が要求されている。特殊な治具や工具が必要なものも多く、加工現場のコスト意識が高まっているのが現状だ。このような時流を受け、ハイスドリル世界一を誇る同社の取り組みに等ついて、工具事業を率いる堀 功 執行役員工具事業部長にお話を伺った。



厳しい経済環境と機械工具事業の奮闘! 

現在、円高の長期化に加え、欧州の信用不安や新興国の景気減速などの問題が、国内製造業の輸出や生産などに暗い影を落としている。このような情勢下で同社グループは、この第3四半期において、連結売上高1,290億6,800万円(前年同期比7.1%増)、営業利益は84億5,400万円(前年同期比20.9%減)の業績を示した。注目すべき点は、このような中でも機械工具事業が、売上高455億6,700万円(前年同期比13.9%増)、営業利益40億400万円(前年同期比26.0%増)の数字にあるとおり、その奮闘ぶりであろう。

切削工具業界をとりまく現状も厳しい。金型企業がかなり海外に出ており、月を追うごとにエンドミルの出荷が減少している一方で、タップは3月に過去のピークを超えて30億円の伸びを示したが、相変わらず金融危機問題が尾を引いているヨーロッパや、中国の景況が落ちていることに加え、円高続きの理由から輸出をしてもほとんど利益にならないという、産業界にとって頭の痛い問題もある。だが、業界を取り巻く経済環境が悪いからといって、指を咥えて黙って傍観しているわけにはいかないのが企業だ。

堀事業部長は、「日本のドリル・タップは強い分野で、世界と戦うコスト競争力と技術競争力を兼ね備えている。弊社の得意分野である特殊工具(ブローチや歯切工具)も、20億円/月(注:経済産業省出荷)でほぼ昔に戻ったといえるでしょう。会社全体としては2010年に立てた中期計画のとおり、2008年に2048億円だった過去の売上高のピークを来年2013年には2100億円、営業利益も過去最高だった2007年の167億円を超えた180億円を狙う。工具部門としても商品群の拡大を行い、2020年には最低でも年間連結売上高550億円以上を達成したい」と力強い決意を見せた。

ハイス(高速度鋼:high-speed steel)工具では世界トップシェアを誇る不二越だが、超硬ドリルも2010年後半から注力しており、シェアも国内で徐々に上がりつつある。具体的な取り組みを聞いてみたところ、「精密工具について当社は世界でもトップ企業ですからこの強みを活かして中国をはじめアジアでシェアを上げていくことを考えています。超硬ドリルは2010年以降国内でのシェアが伸びてきました。2011年度はソリッド工具の約1/4は当社の工具が使われています。これは他社がHSS事業の縮小や撤退が増加する中、われわれは強みのある工具をどんどん伸ばしていく作戦をとってきたのでシェアがついてきたのだと思っています」と堀事業部長。

「ソリッド工具の世界市場をみると、2010年がおよそ6,200億円、2013年は6,600~7,000億円、10年後は8,000億円を超えるとの推定をしている中、断然たる世界ナンバーワンの市場規模を持っている中国をどう見ているのか。

「中国は将来10年に亘って伸び続けるでしょう。今は車の生産量が1800万台ですが、これが3200万台に拡大するといわれています。これに比例して工具の市場規模も大きくなる。東南アジアとインドに関しては、今はまださほど大きくないのが現状で、自動車の生産量もインドがようやく300万台に届くかどうか。ASEANは、タイ、マレーシア、インドネシアを合わせても車の生産は300万台弱。そういう意味ではASEANもこれからだし、インドもこれからでしょう。10年後には必ず拡大していますが、中国に比べればまだまだといえます」(堀事業部長)

地球規模でみてみると、他にも魅力溢れる国があるようだ。
「侮れないのは南米です。ブラジルの車の生産台数は、すでに400万台に届きますし、人口からいっても南米市場は魅力です。当社も工場を1カ所構えていますが、南米の事業は拡大路線でいくでしょうね」(堀事業部長)

先進国と新興国の違い

堀事業部長は先進国と新興国で求められる違いをこう説明した。
「先進国が注力するのは航空機、発電、医療です。自動車は基幹産業ですが、先進国に限っては拡大しないとみています。なぜなら道路事情の良い先進国は10年に1度しか乗り換え需要が起きない・・・というのが実際の市場だからです。一方、新興国は現在の二輪から四輪へのシフトが進むので四輪生産用の工具需要が増加すると見ています」と予測、日本が伸びる産業を「航空機、発電は伸びるでしょう。自動車は横ばいか下降。ただし、自動車はハイブリッドの技術が世界一進んでいますし、最先端の自動車開発は日本で行うので、当社の出番は十分あります。発展のスピードと規模的な魅力を持つ中国ですが、政治的に不安定でリスキーですが、経済としては中国抜きで語れなくなっています」と話す。

中国(江蘇省・張家港市)新工場完成予想図
中国(江蘇省・張家港市)新工場完成予想図
たしかに中国市場の動向をみてみると、自動車業界に関しては車の高機能化や生産ラインの高効率化・高精度化が進み最新鋭の生産設備や要素部品に対するニーズもあって機械加工ラインに必要な精密工具・工作機械、工作機械用油圧機器の需要が大きく伸長している。

このような背景を受け、同社では来年2月に上海から車で一時間のところに大きな工場を立ち上げる。需要拡大が見込まれる自動車、建設機械、工作機械向けの油圧機器や精密工具の現地生産を本格化し、業容の拡大を目指すのだ。
「たしかに中国リスクもありますが、当社の工具に限っていえば、顧客の95%が中国ローカル企業なのです。われわれの取引先は中国ローカルおよび欧米の資本が入った合弁企業が主体であり、生産が旺盛なうえ、彼らが生産するためには、私どもの工具が必要不可欠ですから、心配される不買運動などには繋がりにくいのではと思います」(堀事業部長)

二輪車では世界で一番大きな市場を持つインド。年間2,000万台ほどもバイクが売れる。
「インドはまだ所得が低いので向こう10年はバイクが売れ続けるでしょうが、中には車を持ちたいと願う人もいる。新興国は道路事情が悪く車の寿命が短くなるので、先進国よりも早いサイクルの乗り換え需要が期待できます。インドの人口は13億人ほどですが、その10%が車を保持したら、今のままということはなくなり、爆発的に車が伸びる。われわれが今までに培った技術は東アジアや東南アジア、インドでほとんど活かせます」(堀事業部長)

『大径ヘリカルブローチ』、『INTブローチ』、『HSSストレートドリル』、『X’masブローチ』、『ピニオンカッタ』――――。
これは不二越が世界一のシェアを誇る商品の数々である。
「世界一の商品をひとつひとつ強化していく。世界一の商品がたくさんあれば、おのずと世界一になれるというのが作戦です。かの有名なGEのジャック・ウェルチの台詞で“世界でNo.1、悪くてNo.2になれない事業からはすべて撤退する”という言葉がありますが、われわれは“世界5位の製品でも3位以内にしようじゃないか!”という考えのもと、進んでいます」(堀事業部長)

新しい市場・分野に向けた挑戦! 「航空機」「医療」「エネルギー」に注目

CFRP用クリスタルダイヤコート
CFRP用クリスタルダイヤコート
新しい市場に向けて『航空機』、『医療』、『エネルギー』の3つの分野に注目している不二越。
国内航空機産業は2010年には月に1機だったB787の生産が来年2013年には月に10機生産される。工具需要は1機につき4,500万円、年間にして50億円の見込みがある。
では、どんな工具が必要とされるのか。

「燃費性能向上のためには軽量化が必要不可欠です。難削材であるCFRPやチタンも多用していますので、ばりレス加工と耐摩耗性の両立が工具にとっての課題になります。航空機でも日本とアメリカやヨーロッパでは加工部位が違い、エプロンなどのチタン合金に使う特殊工具が圧倒的に多いヨーロッパと北米に比べ、日本は穴開けとエンジンの一部に集中している。余談ですがエアバス本社のある地域の周囲には町工場がいっぱいあって、日本でいう自動車のように裾野が広いんですよ。現在、航空機に限ってですが、日本は“もの凄いピカイチの技術を持った超一流のパートナー”だと思っています。航空機産業が発展するためにもメイドインジャパンの機体を自分たちで作らなければと感じています」(堀事業部長)

続いて医療に話は移る。医療分野では、人工関節や骨接合材料の埋め込みに使用される『ステンレス製ドリル』の需要が増加している。高齢化社会もあいまって老齢化による骨折事故が増加し、骨接合材料の需要が伸びているからだ。ちなみに骨折症例数の予測として、2010年に年10万人だったものが、2015年には15万人に増加、それに伴いステンレス製ドリル、リーマ、タップの需要も増加すると予想されている。同社も医療用の特殊ドリルの開発を進めているという。

VLシリーズ防振型工具
VLシリーズ防振型工具
エネルギー分野については、2020年までに世界で発電機160基が設置されるとしており、これにはタービンや管板加工にブローチやドリル、エンドミルが多用され、工具需要も1基につき4,000万円が見込まれる(年間60億円)。

「これには耐食性が高く熱伝導率が低いNi基合金や特殊ステンレス鋼が多用され、工具には耐熱性と加工面精度の両立が要求されます。新興国は圧倒的に発電量が足りませんが、環境に優しい太陽光、風力はどの国でもできるというわけでもありませんので、主力はガスタービンや蒸気タービンが増えるだろうと見ています。特にガスが安く入手できると、環境負荷が一番低いので良いでしょうね。高速回転で高温高圧下でも動くタービンをつくることができるのは先進国です。したがってこの分野は世界と戦える分野でしょう」(堀事業部長)



『アクアドリルEXフラット』が絶好調! 常識を変える新発想工具をテーマに「JIMTOF2012」でも華麗に展開!

NACHIアクアドリルフラット
NACHIアクアドリルフラット
最後に不二越の工具で超人気商品『アクアドリルEXフラット』を紹介しよう。
自動車向け燃料ポンプ部品への傾斜面加工を例にとると(入口45度傾斜、出口45度傾斜)、従来は、①エンドミルによる座繰り加工、②ドリルによる穴開け加工――ということで二種類の工具費がかかるうえ、穴出口のバリが発生していた。そこで同社は“穴工程をスルー提案”として『アクアドリルEXフラット』による一発穴開け加工を推奨している。
この製品は穴開けの常識を変えたフラットドリルで、現在6品種658サイズにシリーズを拡張している。“アクアEXコート”により耐熱性、耐摩耗性を向上し、長寿命なのが嬉しい。

11月1日(木)~6日(火)まで東京ビッグサイトで開催される「JIMTOF2012」で、同社は「常識を変える新発想工具」をテーマに掲げ、「抜け際はバリが出る」「傾斜面は2工程」「能率を上げるとびびる」など、加工現場が今まで当たり前と思っていた加工の常識をNACHIの新発想工具で覆し、大きな生産性の改善を提供してくれる。

■プライベートワークショップ
JIMTOF開催中、好評のプライベートワークショップを今回も開催。
テーマは「常識を変える新発想工具」
開催日:JIMTOF会期中毎日開催
期 間:12:00~13:00(会場11:30)
会 場:東京ビッグサイト西展示棟5F西3商談室(3)
定 員:各回30人(申込み先着順)

*なお、各回ともに参加者には昼食を用意。