第37回「金型の日」記念式典および第8回「日韓金型フォーラム」開催 日本金型工業会

日本金型工業会(会長=上田勝弘・大垣精工社長)が、11月2日、ホテルインターコンチネンタル東京ベイで第37回「金型の日」記念式典および第8回日韓金型フォーラムを開催した。

上田会長が日頃の感謝の意を述べたあと、永年勤続有料従業員が表彰された。来賓の挨拶は都築直史経済産業省製造産業局素形材産業室室長。




未来へ発展できる企業像を模索する

日韓金型フォーラムに先立ち、上田会長が挨拶をした。(以下抜粋)
「2003年に第1回の日韓金型フォーラムが韓国で開催されて以来、今年で第8回目の開催を日本で迎えることができました。これも日本、韓国の関係各位の皆様方のご支援、ご協力の賜物と深く感謝しております。
金型産業はご承知の通りにサポーティングインダストリーとして自動車や家電をはじめとする多くの製品の発展にその使命を果たして参りました。しかしながら3年前からの金融不況に伴い、ユーザーの海外工場拡大による日本の金型業界の受注減、円高の加速、想像を上回るコストダウン要請による採算性の悪化等で我々金型業界は戦後最大の試練の時を迎えており、このままでは我が国の金型業界においても日本同様に厳しい環境下での経営を強いられていると思います。
今回の日韓金型フォーラムのメインテーマは「日韓金型企業のグローバル展開について」と題し、基調講演はそのテーマに準じて日本と韓国の講演者に講演していただきます。
今回の日韓金型フォーラムでは未来に向かって発展できる企業像を皆様と論議し、何らかの結論を導き出せたら良いと考えております。
そして金型業界が将来に向けて発展していくための取り組み方について何らかの提言ができればと思っております。
今回の第8回日韓金型フォーラムが成功裡に終了することを期待するとともに今回のフォーラムにご参加いただいた関係者の皆様方に対し厚く御礼を申し上げます」

情報交流と実質的な協力を通じて共にグローバル市場を先導していければ

続いて金銅燮韓国金型工業協同組合理事長挨拶をした。(以下抜粋)
「私は、本日韓・日両国の金型業界関係者が一堂に集まり、第8回韓日金型フォーラムを開催できることを心から嬉しく思います。
 ご承知の通り韓日金型フォーラムは、2003年から毎年両国で持ちまわりながら両国の共通懸案を話し合い、相互交流と協力を通じて発展させてまいりました。
 今年も大変有意義なテーマを設け、開催することが出来るようご尽力いただきました。日本金型工業会の上田勝弘会長をはじめ関係者の皆さま、また韓日金型業界および学会の皆さまには心から感謝を申し上げます。
 このフォーラムは、“韓・日金型企業のグローバル化について”というテーマで開催いたします。世界的な経営環境の急激な変化の中で、今や“選択”ではなく“必須”と言えるほど、とても重要な課題であると考えます。
 最近韓国と日本は、世界金融危機の影響を受け大きな混乱を強いられております。また、長く内需景気の萎縮が持続し、大企業の海外移転、中国をはじめとした金型振興競争国の浮上など、経営環境の大きな変化により今後も両国の金型業界は、新たな市場確保および多様な販路開拓への努力が欠かせない状況にあります。
 このような状況の中で今回のフォーラムでは、韓・日両国の金型企業達がグローバル化に対応する戦略を立て、実践するための多様な手段を模索し見出すことのできる貴重な時間になることを期待してやみません。
 ぜひ、この場所にお集まりいただいた両国の金型産業に従事されている皆様にとって、このフォーラムが大きな助けになることをお祈りします。また、これからも韓日両国金型業界がより緊密な情報交流と実質的な協力を通じて、共にグローバル市場を先導していくことができる“きっかけ”になることを期待いたします」。

日韓のものづくりとその未来を考える

弘中史子滋賀大学経済学部教授の基調講演概略は以下の通り。
 「金型およびそこから生まれる成形加工品は、製造業をあらゆる角度で支えている。これは韓国も日本も同じであろう。そこで今回は、ものづくりについて広く考えてみたい。
 韓国は、日本にとって大変気になる存在である。それはなぜか。まず3つの理由があげられるであろう。①地理的に非常に近いこと、②産業構造が似ていること、③少子化であること、である。
 つまり、類似した経済環境下にあるがゆえに、いつも着目せざるを得ないのである。しかも韓国の産業は金融危機後、確実に回復し、ものづくりがすこぶる元気なように見受けられる。もちろん為替相場の影響や、国家の強力なリーダーシップなどがあることは否めないが、元気の秘密はそれだけではないであろう。
 韓国のものづくりで卓越している点は、次の3つである。
 第一が、マーケティングの巧みさである。とことん消費者の生活に密着して、そこから製品が生み出される。グローバル化に成功したのも、これが影響しているであろう。
 第二が開発から販売までのリードタイムが短く、スピーディな点である。トップの権限が強く、意思決定が速い。さらに量産化を開始したあとは、内製化も迅速である。これは今後の日本企業のビジネスのやり方にも影響していくであろう。
 第三が人材の国際化である。韓国企業は人材のグローバル化に熱心である。同じ少子化という問題を抱える日本は、見習うべき点が多い。
 もちろん日本のものづくりにも強みがある。
 第一が、研究開発力の強さである。製品にすぐに応用できるような研究はもとより、基礎研究を行う意欲を持っている。
 第二がボトムアップである。工場では、現場の社員が自ら改善し、それを社内に浸透・展開させる力を持っている。同じことは企業間取引にも表れており、日本の大企業の製品は多くの中小企業の部品や加工が支えている。
 第三が人材の多能工・複眼化である。1人の社員が、様々な工程や職務を経験することによって、視野が広がっていく。
 こうしてみると、韓国と日本はある意味で相反する特長を捉えていることになる。もしお互いの特長を学びあったなら、最強のものづくりができるようになるだろう。そのために、まずわれわれがすべきことは、次世代を育てることである。
 日本の製造業は、若いうちからの経験を重視する企業が多い。また大学進学率も諸外国に比べれば決して高くない。それゆえに大卒以外の社員育成も依然として鍵であり、工業高校の存在意義などを改めて見直す必要があろう。
 韓国は高い大学進学率を誇るがゆえに、今後も実学教育の推進が望まれる。
 また、両国とも学卒者の就職が依然として厳しい点が懸念される。ものづくりに関心を持つ若者に門戸を開き、彼・彼女たちが卒業後に迅速に経験をつむことのできる環境づくりが望まれる。
 韓国と日本で、ものづくりを担う次世代が育てばお互いが学びあうことは難しいことではない。
 若い韓国人・日本人は、音楽やファッションをはじめとしたカルチャーを共有する世代になった。そして互いの存在に好感を抱いている。彼・彼女たちのコミュニケーションは、われわれの世代よりももっと緊密なものになるはずである。
 世界を見渡せば、アジア以外にもロシア、南米、アフリカ、東ヨーロッパなど、これから発展していく市場が多い。他方で、中国、インド、タイをはじめとしたアジア諸国が製品のボリュームゾーンで競争力をつけてきている。
 だからこそ、韓国と日本はお互いに学び合うことで成長しなければならないのである」。

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