【令和8年 年頭所感】日本産業機械工業会/日本工作機械工業会/日本機械工具工業会
「世界規模でのサプライチェーン再整備が重要」
●(一社)日本産業機械工業会 会長 金花芳則
新年あけましておめでとうございます。
会員企業ならびに関係各位におかれましては、健やかに2026年の新年をお迎えのことと心よりお慶び申し上げます。
2025年は、米中対立の常態化や東アジア情勢の緊迫、ロシアのウクライナ侵攻の継続、中東での緊張の高まりなど、地政学的緊張が引き続きました。これらは経済安全保障の強化・確保の必要性の認識をさらに強め、サプライチェーンの見直しなど世界的に展開されるに至りました。
世界経済を振り返りますと、経済協力開発機構(OECD)が昨年12月2日に公表した経済予測では、2026年にかけて緩やかに減速すると予測しています。しかし、人工知能への投資ブームが米関税引き上げによる影響の一部を相殺し、世界の経済成長は予想以上に持ちこたえているとして、米国やユーロ圏など一部の主要国・地域では成長率見通しを上方修正しました。一方で、昨年4-6月は世界貿易の伸びが減速しており、より高い関税は今後徐々に物価上昇に繋がり、家計消費と企業投資の成長は抑えられることが見込まれると発信しています。
こうした中での産業機械業界の状況ですが、昨年度上半期(4月~9月)の産業機械受注実績は、金額で3兆5,909億円(前年同期比27.5%増)となり、上半期としては過去最高金額を記録しました。内需・外需ともに2桁の伸びを示し、国内外市場での設備投資意欲に応えたことで、成果として実を結んだ数字となりました。
また、当工業会としては国際交流事業において、大きな成果がありました。第30回目となる海外貿易会議をスウェーデンで開催し、現地産学官を代表する方々に参加いただき熱心な議論および意見交換を実施しました。経済連携の活性化に向け、今次の成果を活かしてまいります。さらに、第1回グローバルサウス調査を実施しました。
成長著しいインドへの調査ミッションを派遣し、ベンガルールおよびチェンナイの産業動向やインフラ整備需要、環境規制の最新動向を把握してまいりました。これら二つのミッションを核に、今後、さらに国際的な存在感を高めていけるよう取り組んでまいります。
さて、2026年ですが、これらの確かな実績を力に、新たな飛躍を果たす年としてまいりたいと考えており、次の点に重点をおいて取り組んでまいります。
まず、カーボンニュートラル社会の実現への対応です。政府が掲げる目標の達成に向け、また、国内外からの需要に応えるためには、継続的な革新技術の開発が必要です。私が産機工会長就任後に始めた水素・アンモニアの早期社会実装に向けた勉強会は、本年も推し進めてまいります。わが国経済の成長力を押し上げるため、イノベーションの加速やDXを推進し、他国を凌ぐ高付加価値製品・サービスを追求することで、わが国の数多産業の競争力強化に貢献していく所存です。
さらに、経済安全保障強化策として世界規模でのサプライチェーンの再整備が重要となります。サプライチェーンの安定は、わが国経済を支える根幹に当たります。我々産業機械業界は、サプライチェーンを構成する製造装置・部素材・原料等の製造能力の強化に資するよう技術を開発し、生産設備の提供に取り組んでいく必要があります。
また、人材の確保・強化に向けた取組も重要です。産業機械業界全体として活性化されるよう知恵を絞って対応してまいりたいと考えます。産業機械は、日本経済の屋台骨であり、同時に世界の持続可能な未来を支える重要な鍵でもあります。当工業会は、会員の皆さまの諸課題に応え、地球環境保全、国際交流、標準化などの各種事業を推進し、産業機械業界並びに会員企業の皆様の事業発展に向けた活動に力強く取り組んでまいります。
年頭にあたり考えるところを述べさせていただきましたが、関係各位におかれましては一層のご指導、ご協力をお願いしますとともに、皆様のご多幸を心からお祈り申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。
「世界の製造業の発展に貢献」
●(一社)日本工作機械工業会 会長 坂元繁友
2026年の新春を迎え、謹んで年頭の御祝詞を申し上げます。
さて、昨年を振り返りますと、ロシアとウクライナの戦闘をはじめ世界各地域には依然として地政学的リスクが顕在化しておりました。また、通商面では、いわゆるトランプ関税の発動や通商拡大法232条など、米国が矢継ぎ早に通商政策を打ち出し各国はその対応に追われるなど、世界情勢は混沌とした中で、不透明・不確実な状況が続いた1年でした。そのような局面にあって、産業や社会の構造はDX(デジタルトランスフォーメーション)、GX(グリーン・トランスフォーメーション)が進展しており、製造業では関連する設備投資が進められました。この結果、工作機械の受注総額は昨年の年初に発表した1兆6千億円を下回るものの、高水準を確保する事が出来たと見込まれます。
本年につきましても、世界はデジタル・グリーン・レジリエンスをテーマに、あらゆる製品・サービスが生み出され、設備投資はグローバル規模で継続していくと見込まれます。日本の工作機械産業は、AI/IoT、デジタルツインの活用、ロボット・計測機・搬送装置類等との連携による自動化/省人化、カーボンニュートラルを見据えた省エネ技術、これらを搭載した、社会課題の解決に寄与する高付加価値機械の提供を通じて、世界の製造業の発展に貢献して参ります。そして、国際情勢は不安定な状況が継続していくと想定せざるを得ず、輸出管理・経済安全保障には細心の注意をはらい、適宜適切に対処して参ります。
本年は、我が国工作機械業界最大のイベントであるJIMTOF 2026を10月に東京ビッグサイトで開催致します。「果てなき高度へ 羽ばたく技術」をコンセプトに、最先端の工作機械技術・製品を世界に向けて発信致します。JIMTOFでは国内外の技術者が集う「国際工作機械技術者会議」を開催するほか、全国の学生を招待して実施する「工作機械トップセミナー」や盛沢山の併催行事を用意して、工作機械産業の魅力を来場者の皆様にお伝え致します。是非、多くの方にご来場頂きたいと存じます。
日本工作機械工業会は、日本の工作機械産業の国際競争力を維持・強化していくための活動、そして、日本の製造業に存在する多くの老朽機を最新設備に更新させていく取り組みを、本年も鋭意進めて参ります。関係各位には当工業会の事業に対する一層のご理解とご協力をお願い申し上げます。
「2026年度は5,000億円の大台にチャレンジ」
●(一社)日本機械工具工業会 会長 佐橋稔之
2026年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。
2025年の製造業全般を振り返りますと、労働人口減少という構造的な制約を抱えながらも、生産は概ね横ばいといえる状況でした。しかし同時に多くの課題にも直面した一年といえます。まずは米国の相互関税問題です。当初は24%という極めて大きな数字であり、刻々と状況が変化し、その都度翻弄される日々でありました。夏以降は徐々に落ち着き、また課税分は顧客価格に転嫁されるケースも増え、当初想定ほどの影響にはならなかったとはいえ、それでも、切削工具では15%の関税が実際にかかり、その影響は小さいとはいえません。2026年も自国第一主義による諸策に対する備えが必要かと想定しています。
また当工業会においては、中国のタングステンを含む重要鉱物輸出規制による原材料不足、価格高騰が挙げられます。昨年2月から始まったこの規制は現在も継続し、規制後中国から日本に輸出されたタングステン材料は、その粉種により前年比2~5割程度に留まっています。それを受けてAPT相場は一気に上昇、前年比2倍以上に高騰しています。この輸出規制問題、もともとは、米中抗争に源を発したものでしたが、本稿執筆時(11月)には、高市新首相の発言によって直接日本が中国のターゲットとなりそうな情勢です。本誌が発行される2026年始以降、果たしてどのような状況となるのかと懸念されます。
一方で、4月から10月にかけて大阪・関西万博が開催され、開幕前には様々な批判的な意見が飛び交ったものの、日を追うごとに人気は上昇し、成功裏に終えることができ、特に関西にはそれなりの経済的好影響がもたらされました。これをひと時のものとせず、しっかりとレガシーを残したいものです。
さて、話題を当工業会に戻します。2025年度上期の機械工具生産額は前年度同期比+2.1%の2,369億円でした。しかし、当初は下期の需要回復を想定し、通期4,840億円の見通しとしましたが、下期になっても期待ほどの回復は見られず、秋季総会で4,802億円に下方修正いたしました。
2026年度は、2018年度以来の5,000億円の大台にチャレンジしたいものです。そのための今年の重点課題として、第一に、タングステン原材料の調達、リサイクル促進です。原材料不足は業界にとって命取りとなりかねません。国の力もお借りし、原材料の安定供給、リサイクル強化による国外流出防止を働きかけます。そのため、昨年にタングステン原料のワーキンググループ(WG)を発足させました。第二に、国際化です。2025年はドイツで開催されたEMO2025視察や欧州工業会ECTAとの会合を実施しましたが、近年世界の見本市の動向が変化する中、本年はより実ビジネスに近いAMB2026への共同出展を企画し、また、活況新市場での展示会視察も検討し、海外進出を支援したいと思います。第三に、工具デジタルデータ標準化と活⽤を検討するためのWGを再開しました。最後に、今年はJIMTOF2026の開催年ですので、当工業会としてもしっかりとサポートします。今回は会場スペースの制約が大きな課題ですが、会員の皆様が十分に製品をPRできるよう、また、当工業会全体としても、上述のリサイクル活動やGX対応などを示せるよう努めます。
結びに、本年が皆様にとって実り多く、またご健康で充実した一年となりますことを心より祈念し、私の新年の挨拶とさせていただきます。 本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。


