扶桑精工 松山社長×牧野フライス製作所 宮崎社長 ~時流に合致したビジネスとは~
現場感覚に敏感だからこそできる提案でビジネスチャンスを掴む


―ところで扶桑精工は今年の「INTERMOLD2025」で、水路洗浄機『アラッタくん』を展示していましたが、金型メーカーが開発しただけあって、金型メンテナンスの際に、〝かゆい所に手が届く〟的な製品で注目を集めました。
松山 プラスチック成形用の金型には金型が熱を持ちすぎると成形品の寸法が安定せずワークに歪みが出てしまうので冷却水路が設けられています。冷却が速ければそのぶん、生産性がアップします。このように冷却水路は品質と生産効率を両立させるための重要なものですが、この冷却水路は長年成形し続けてくると、人間に例えると、血管のコレステロールのように錆やカルシウム、バクテリアなどが堆積され、流れなくなってしまいます。この製品は大阪工場の責任者が考案し開発して作りました。
宮崎 金型メーカーだからこその視点ですね。
松山 冷却水路を清掃してもなかなか落ちなくて手こずっていました。そこで自社開発したのです。

対談終了後、宮崎社長が、「実際に『D500』をどのように活用しているのか知りたい。」との要望があり、松山社長が工場内に案内した。
5軸制御立形マシニングセンタ『D500』は、一例だが、有名なドリンクびんの金型を製造するためにも活躍していた。ちなみに『D500』は相模原工場に導入してから5年が経つ。生産性の向上から3年前に大阪工場、今年は秋田工場にも導入している。金型の写真はNGだが、綺麗な微細模様もついている。機密性が高いため、詳細を省くが、鋳物をドライ加工で行っているという。ちなみに一部分の加工だが、R0.3 mmの工具で1万2,000回転。それを聞いた宮崎社長が能率を高めるためのヒントを担当者に話をしたあと、「なにかお困り事はありますか。」と尋ね、担当者は〝切りくず処理〟について相談していた。
扶桑精工は需要が変動する現代において、単に加工請負だけではなく、まだ表面化していない潜在需要を発見するためにアナログとデジタルのハイブリッド営業で強みを発揮している。工作機械に自動化・省人化機能を組み込み、自社の生産体制も効率的な牧野フライス製作所は顧客をパートナーとして大切にするという企業文化を持つ。両社とも、顧客の現場に足を運ぶことで、企業の強みや課題、技術を肌で感じ取っており、そこに大きな価値があることを知っている。