「MOLDINO VISION 2025」で革新ソリューションを訴求 

 

 MOLDINO(社長=金子善昭氏)が、去る6月27日(金)から7月3日(木)までオンラインで「MOLDINO VISION 2025」を開催し、中長期ビジョンと新戦略や業績報告、今後の経営戦略や革新ソリューションを説明した。

 初めに金子社長が中長期ビジョンと新たな戦略の説明をした。この中で金子社長は、世界経済の動向について、「米国でのインフレの高止まりとそれに伴う利上げの影響が引き続き設備投資を抑制していることから製造業全般に原則の兆しが見られる一方、生成AIなどに代表されるデジタル技術や再生可能エネルギーといった成長分野に引き続き投資が集まり明暗が分かれている状況だ。中国に目を向けると不動産市場の低迷と内需の伸び悩みが製造業全体の回復を妨げており厳しい環境が続いている。特に工作機械や加工部品では価格競争が激化している。欧州においてはエネルギー価格の高騰や地政学リスクが懸念剤労であり特にドイツなど輸出主導経済を持つ国々では製造業の成長が鈍化している。」との認識を示し、「世界は選別の時代に入っている。需要のある分野では確実にビジネスチャンスが生まれている。われわれとしても技術力と提案力を武器に、より一層選ばれる企業として付加価値の高い商品を供給し続けるメーカーであることが大切であると強く感じている。」と述べた。

 また、親会社の三菱マテリアルとの関係についても触れ、「当社の独自性を尊重する方針で事業運営してきたが、われわれグループが直面している足元の急激な事業環境の変化に迅速かつ強固に対応するためには両社の連携強化とそれぞれが持つ強みを最大限に活かした事業運営を図る必要がある。」と述べ、製品ポートフォリオにおける両社の注力すべきポジションを明確にし、経営リソースの集中と選択を図ることにした。

 また、これまで掲げてきた金型用プレミアムブランドからグローバルニッチトップブランドへとビジネススコープを大きく変えるとともに、あらゆる経営リソースを集中させることで、「他社が手を付けないニッチな加工現場において独自技術を極めることで市場での差別化を図るとともに、三菱マテリアルグループ内で当社の役割を果たしていく。」と意気込みを示した。

構造変化に見る金型産業

意気込みを示す金子社長

 同社の主要マーケットである金型産業について金子社長は、「自動車業界を中心に長年支えてきた構造が大きく変わりつつある。特に、EV化の加速、軽量化や部品点数の見直しによって金型の需要そのものが質・量ともに変化している。加えて、海外との価格競争も激化し、単に高精度な金型を作るだけでは生き残りが難しい時代に入ってきた。お客さまが求めているのは、加工効率、安定稼働、トータルコスト削減。われわれ工具メーカーも、こうしたニーズに対して的確に応えることがより一層求められている。一方、製造業全体としての課題もあり、技能継承が難しい中小の現場では人が足りない、あるいは人を育てる時間がないという声を耳にする。」と喫緊の課題について言及し、「設備投資の抑制傾向も続いていることから、導入コストに対する高い成果が求められる状況が続いている。その中で、既存の機械でいかに効率を上げるかが現場の最大のテーマとなっている。さらにはカーボンニュートラルやデジタル化、これらへの対応など、構造的な変化も避けては通れない。限られた資源の中で、現実的かつ持続可能な解決策を模索していくことが、これからの製造業には欠かせない視点だ。」との考えを示した。

 ユーザー環境のさまざまな変化の中で、同社では、部品点数の削減を図るための金型の大型化と加工方法の変化、金型性能向上に伴う金型材の進化や変化と、加工難易度増加、そして製造工程の難加工化や複雑化、さらなる微細化に対応する加工方法が進むと考えており、同社では、「単なる工具の提供にとどまらず、現場の課題を共に解決するパートナーであり続けたい。そのためにも皆さまとの連携を一層深め、信頼を積み重ねながら価値のある提案を続けていく。」との方針を示した。

製造工程の最適化を図る「PRODUCTION50™」

 同社では、製造現場での課題解決へ向け「PRODUCTION50™」を提案している。これは、同社が長年培った技術をもとに最新の工具を活用しながらユーザーにおける製造工程をトータルに見極め最適化を図ることで製造コストを半減にするコンセプトである。

 金子社長は、「2002年に提唱してから20年以上にわたり、日本や欧州などさまざまな地域のユーザーさまで取り組んでいただき、大きな成果を発揮している。自動化、省人化とそれに伴う加工能率向上によりCO2排出量の削減効果も期待できることから、カーボンニュートラルの実現にも寄与できるものと考えている。」と強みを話した。

 また、同社が次なる成長領域として注力するのが微細加工分野であるとし、これについて、「金型加工は、数ミクロン単位の精度管理や加工時間と品質の両立といった高度な技術力が求められる領域であり、われわれがこれまで培ってきた加工技術とノウハウを土台に、微細加工分野においてもMOLDINOのプライドを大いに発揮していきたい。」と意気込みを示したあと、野洲工場の中に微細加工室を開設したと加えた。

業績ならびに営業本部方針について

営業方針を示す後藤営業本部長

 後藤営業本部長より業績ならびに営業本部方針の報告が行われた(全体受注金額はコロナ前の2019年基準)。それによると、24年度は19年度比107%の実績をあげており、25年度は110%まで増長する見込みとした。海外については、為替の追い風が一部あり、インドや欧米を中心に上昇し、19年度比25%アップの状況とした。

 続いて主要セグメントであるソリッドエンドミルやインサートの実績推移について説明した。それによると、為替などのさまざまな要因があり、わずかに増長しているとした。

 品質管理については、「MOLDINOが掲げる重要事項の第一は、安全健康で、企業活動の根幹を成すもの。次に、コンプライアンスの徹底とガバナンスの強化、そして品質を重視していく。バッドニュースファーストを合言葉に社内からの声を真摯に受け止め、不正や捏造を未然に防ぐよう心がけている。皆さまが安心して商品を拡販できるよう、今後も手を緩めることなく継続して取り組んでいく。」と力強く述べた。

 国内営業方針について小櫻国内営業部長「難削加工において、加工半減、PRODUCTION50™を実践することで、お客様の改善活動へ寄与していきたいと思っている。」と述べた。新商品については、寺井ソリューション営業部長が、「新商品で切り拓くギガキャストと燃料電池の革新ソリューション」をテーマに説明をし、最後に金子社長がお礼の言葉を述べ閉会した。
 

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