2025年5月分工作機械受注総額は1,302.1億円

日本工作機械工業会がこのほどまとめた2025年5月分の受注実績は以下の通り。

2025年5月分工作機械受注総額は、1,287.2億円(前月比△1.1% 前年同月比+3.4%)となった。前月比2カ月連続で減少したが、3カ月連続で1,250億円を上回るなど、以前高めの受注状況が続いている。前年同月比は8カ月連続で増加した。地域・業種・企業規模等により濃淡はあるものの、外需を中心に総じて根強い設備需要が感じられる。

5月の受注は前月比で若干の減少が見られたものの、前年同月比では増加と横ばい圏内の動きから総じて様子見となるい鈍い動き。

5月分内需

 このうち内需は、前月比で▲4.0%、前年同月比で▲5.2%の330億1,600万円で、前月比・前年同月比とも2 カ月連続で減少した。5 月における前月比マイナスは8 年連続で、ゴールデンウイークによる営業日数の減少も影響したと見られる。外需と比べて力強さに欠けるが、1~5 月期の累計額は前年同期比▲0.6%とほぼ横這い基調で、一定の底堅さも感じられる。会員企業に対するヒアリング結果を総合すると、建設機械、各種金属製品や精密部品、食品機械、各種モータ、減速機、産業用電子機器、半導体製造装置(消耗品関連)、航空機のエンジン部品、船舶用エンジン等での受注が比較的目立つ。自動車関連はEV 向け大型ダイキャストマシン(ギガキャスト)関連や商用車に関する受注が散見されるが、年度末の3 月に受注が集中した反動減や、次世代車の開発方針についての逡巡もあって全体的に振るわず、前年同月比は他の主要業種と異なり大きく下げた。各業種とも大手・中堅ユーザによるまとまった規模の投資がけん引しており、中小企業ユーザは各種補助金の採択結果が判明するまで発注を控える様子が感じられる。

 

(出所:日本工作機械工業会)

5月分外需

 外需は前月比で▲0.1%、前年同月比で+6.7%の957億200万円となった。3カ月連続で950億円を上回った。前年同月比は8 カ月連続で増加した。主な地域別に見ると、「北米」(327 億円)は「金属製品」が前月比で6 割強下げた一方、建設機械や自動車関連の受注が大きく増加し、2 カ月連続で320 億円を上回るなど第2 四半期に入って以降好調が続いている。「欧州」(158 億円)は2 カ月ぶりに150 億円台を回復し、本年の過去最高額を更新した。このところドイツが30 億円台半ばで安定し、5 月はイタリアが22 カ月ぶりに30 億円を超えるなど、昨年後半に大きく落ち込んだEU 圏での受注状況が徐々に改善している。

 「アジア」(452 億円)は、昨年来高水準での受注が続いている中国の「自動車」が前月比で若干下げた他、東南アジアやインドであった航空機関連の特需が剥落し、前月比は2 カ月連続で減少した。しかし3 カ月連続で450 億円を上回っており、全体的にみて活況が続いている。


(出所:日本工作機械工業会)

今後の見通し

 米国による自動車輸入への追加関税や相互関税の発動が相次ぎ、米中対立激化の懸念も高まった4 月以降、世界経済の不確実性が増し、米国内をはじめ各地域で設備投資が停滞することへの警戒感が広くうかがえる。しかし5 月分の受注結果を総覧したところ、目立った影響は見受けられない。

 6 月3 日にOECD(経済協力開発機構)が発表した2025 年の世界経済の成長率は▲2.9%で、前回3 月の調査結果から▲0.2%下方修正された。一方、同じく6 月上旬に実施した当会会員企業を対象とする四半期見通し(DI)調査は、▲2.8pt と12 四半期連続で「減少」超ではあるものの、前回調査(3 月上旬)比で+1.3pt 改善した。当DI 値は実際の受注額との連関性が高く、これで2 四半期続けて改善したことから、年央以降の受注増加が期待される。

 各地域別に展望すると、まず北米は、米国の中小ジョブショップ等で設備投資に一部慎重姿勢が認められるものの、全体傾向として引き合いや商談は先細っておらず、自動車や建設機械、航空・宇宙関連で今後もまとまった規模の受注が見込まれる。

 中国については、自動車関連で有力完成車メーカ系列を中心に活発な設備投資が続いている他、各種産業機械やエレクトロニクス分野においても、新興の有力ユーザ等による活発な設備投資が続くと見られる。中国政府による、大規模な設備更新と消費財買替を促す政策措置も設備投資を下支えしていると見られ、会員企業の間では、同国一般経済の停滞にも関わらず、工作機械需要は今後も堅調に推移するとの期待感が広がっている。インドでは通信機器関連の特需が一旦収束した様子だが、自動車や自動二輪、農業機械等で引き続き旺盛な需要が見込まれる。

 北米・アジアと比較して、日本(内需)及び欧州の景況は足元で力強さを欠いているが、いずれも春先以降地合いが整いつつあり、今後受注の緩やかな改善が期待されている。総じて、自動化・高効率化、環境対応の需要は世界的に見て根強く、日本国内や北米においては長らく設備投資を抑制してきたユーザを中心に老朽機更新の必要性も高まっている。加えて、世界各地で生産拠点の多角化・分散に伴う設備需要の増加も想定される。但し米国の関税措置については、これから悪影響が顕在化する可能性がある他、イスラエル-イラン情勢は、双方の報復攻撃に加え米国による空爆が今後更なる武力衝突の激化に至った場合、世界経済への影響が大きくなるものと懸念される。引き続き世界情勢や経済動向を油断なく注視し、世界各国での需要に対応していく。
 

moldino_banner