こんなトレンドに疑問

昨年12月に携帯電話からスマホにチェンジしたが、どうも具合が悪い。
購入する際、パンフレットを吟味した限りでは国内最強のスマホだったが、発売日が延期され、延び延びになったシロモノである。

どうせ買うなら国産が良いと思っていたが、どうやら発表している通りにサクサクとは動かないらしく、本体が強烈に熱くなるという黒い噂が巷で囁かれていた。が、風評に惑わされず日本製を信じたい・・・そんな気持もあり、購入に踏み切った。
正直なところ、もともと携帯通信機器などの販売方法に疑問があったので、購入をして確かめたい気持ちもあった。

この手の販売方法に日々疑問を持っていた点を挙げると、生活・ビジネスに密着する大切な機器だというのに、高額製品でありながら価格も決まらぬ、製品も出来ていないうちから、堂々と「予約販売」を謳うところである。なお、誤解を招かぬように加えておくと、全ての製品において予約販売が悪いと言っているわけではない。通常、予約して購入するものの場合、品物の情報に詳しく、販売・製造元に信頼を置いている場合がほとんどであるので、今回は“最新機種がよく分からない”という一般大衆の声が多い最新携帯情報機器にのみ触れている。

画期的なスマホはここ数年、市場にお目見えしたものであるから製品をよく理解していない消費者だって多い。なのに商品も見本もない中で、煽りに煽る販売方法は、消費者がよく知らない品物をよく知らないうちに購入するという危険性を孕んでいるといえる。高齢者などは特に注意が必要で、高いお金を払って購入しても文字の打ち具合が思ったようにいかず、後で後悔することもあろう。

それでも「スペシャルな最新機種が売切れたらどうしよう」的、消費者の足元を見るような販売方法が主流なわけで、最新のスマホが欲しい消費者にとってはまんまと痛いところを突かれているわけである。

さて、品行方正な私は店側から言われた通り予約をして、指定された時間通りに店を訪ねて、その場で1時間も羊のように並ばされてスマホを購入したわけだが、ここまでして仕入れたスマホが「パンフレットにあるようには使えない」という異常事態が発生してしまった。
残念なことに一部で囁かれていた風評は当たっていたのである。

サクサクいくどころか、すぐにフリーズしてしまったり、使用途中で電源が勝手に切れるので、ここ一番のときに電話がかけられない。メールも打てないということはしょっちゅうあるうえ、カメラもピントが合わない、シャッターが押せない、加えてワンセグも観られないという不具合が立て続けに起きた。お陰で移動中、放映している大好きな「カーネーション」を観逃すこともしばしばあり、非常に不愉快な思いをしたわけだ。しかも本体の熱がすごい。すぐに熱を持つくせに熱くなると充電すらできないうえ、操作不能になり、もう致命的である。

話を元に戻す。
スマホを購入し家に帰って箱を開けたところ、一枚の紙ペラが入っていた。
そこにはこう書かれていた。

――通話、インターネット、カメラ、アプリなどを長時間使用したり、充電しながら使用すると○×△□○×(←機種名)が熱くなることがあります。熱くなった場合には、充電またはご使用中の一部機能を停止することがありますが、故障ではありません――。

私はこのペラの紙切れを発見したとき、噂は本当だったんだ・・・と膝から崩れ落ちそうになった。故障ではないかもしれないが、不具合といえるのではないか。一部機能どころかほとんどの機能が停止する羽目になるとは知るよしもなかったが、日本語のあいまいさを呪わしく感じた。最近、この手の表現が当たり前のように蔓延ってるのを思い出し、ギリリと奥歯を噛んだ。

最大の問題は不具合の内容よりも、このような欠陥を承知で製造元は出荷し、販売元は売りつけるという企業倫理に反することである。

発売日が延期の延期で延び延びになって、改良が追い付かず見切り発車をしたと勘ぐりたくなるような出来事に、この携帯通信機器業界については「ものを売る」ことを真剣に考えてほしいと強烈に思った。

最近の通信機器はこのような売り方が当たり前である・・・と言うのであれば、スマホ人口が増加にあるのだから消費者は黙っても購入してくれるという思い上がりがあるのではないか。お家芸である「きめ細かいサービスの日本」は一体どこへいったんだ。

生活・ビジネスに密着するための新しい機能を持った製品だからこそ、もっと分かりやすく丁寧に売って欲しい。製品も完成していない、値段も決まってないうちから予約を取り、不具合承知で売りつけるやり方は、果たして社会通念上いかがなものだろうか。

もし、ものをつくるモトといわれている工作機械業界にこれと同じようなことがあったとしたら・・・・と思ったらゾッとする。新しく購入した工作機械の納品書の中にこのような文書があったらメーカーおよび代理店等、業界をあげて大変な問題になるのは間違いない。幸い、この業界にはそういった問題はあるわけもなく、日々、コツコツと産業を支えている。

「みんながそうなんだから、そうで当たりまえ」という考えは私にはない。
物事の善悪が多数決で決まってたまるか。異常が当たり前であるほど怖いものはない。
以前、友人が「君たちはガリレオの気持ちになったことがあるか」と言ったことがあった。まさしく、今の私はそんな気分である。

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