MOLDINO 野洲工場を徹底取材!  ~最新工具で加工デモを拝見~

 

金型加工業界にイノベーションを!

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カッティングラボにて

 

 本年創立96年を迎えるMOLDINOは2020年、三菱マテリアルの完全子会社となり、三菱日立ツールからMOLDINOに社名を変更した。この社名は、金型を指す〝MOLD&DIE〟と革新を意味する〝INNOVATION〟を組み合わせたものだ。金型加工分野向け超硬工具に軸足を置く事業戦略を掲げて世界に展開を進めていこうという意気込みがこの社名からも分かる。

 野洲工場内には様々なメーカーの工作機械が合計11台設備され、顧客のユーザーテストや試作の評価も対応しているカッティングラボがあった。精密加工室は24℃の恒温室で運用しており、空調の影響を受けないようにしている。

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ER5HS

 今回、ここで切削実演を見学させてもらった。製品は高能率側面切削用エンドミル『ER5HS』、工具径は6ミリ。被削材はS50Cでポケット状の彫り込み加工を行った。

 工具が動き出した。ヘリカル状に動いている。今回使用する機械はオークマの『MB-56VA』、主軸は『HSK63-A』。切削条件は回転数7,960、送り速度が3,980。切り込み深さ17ミリ、切り込み幅0.48ミリ。

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安定した切りくず形状。切りくずの大きさにバラツキがほとんど見られない!

 赤松副工場長いわく、「送りが速く、切り込み量が17ミリも突っ込んでいくと、長い切りくずが排出できずに、詰まって折れるというアクシデントがありますが、『ER5HS』には、問題の切りくずを最適な長さで分断できるチップブレーカー形状が設計されています。」とのことで、スムーズに削っているのが分かった。

 今回のデモでは、〝負荷制御加工〟というツールパスを組んで加工をしている。ポケットコーナー部を攻める時に一定の負荷以上にならぬよう切り込みを調整しながら加工を進めていくやり方である。工具に優しいツールパスによって、安定加工を実現しているのだ。

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ワーク

 ポケットの中央よりも右側のところを円弧状に繰り広げて加工をしていく。この件について、赤松副工場長は、「直線で広げていくと直角の部分ができるうえ、負荷がかかり、工具がびびり振動を起こして外周刃がチッピングする、もしくは折れたりするようなことが起こってしまいます。円弧状に加工をすることによって負荷が軽減されるほうが工具にとって優しく、長い寿命で削ることができるということが言えます。」と説明をしてくれた。

 工具を通常のものにして今回と同じ加工をした場合、切り込み深さを半分にしなくてはならないうえ、送り速度を下げなくては安定した加工ができないものとされているが、今回のデモ加工にて一気に17ミリも突っ込みつつ、送り速度が4,000近いスピードでポケットを彫っていけるのだから、非常に画期的である。

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古野 開発技術部長(工学博士)

 これは負荷制御ツールパスと最新工具と合わせた画期的な加工法だが、「日本では浸透していないのがわれわれの課題となっています。欧州ではすでに普及している加工法なので、今後工具だけを売るのではなく、CAMも併せて環境面でのアプローチを含めて売り込んでいきたいと思っています。」意気込みを示す古野 真弘 開発技術部長(工学博士)

 デモ加工が終了し、加工面をチェック。細かい切りくずがしっかり排出されている。しかも切りくずの形状にもバラツキがないのには驚いた。

 「熱が上がると切りくずは青っぽい色になりますが、グレーっぽい色で、熱も上がっていないことが分かります。ポケットの中も見て頂くと、側壁が非常に綺麗に仕上がっています。」と自信をみせた。

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