【対談】『つくるの先をつくる』日進工具社長 後藤弘治氏×『感性と技術で世界を虜にする』独立時計師 浅岡 肇氏

 

社員のモチベーションと価値を市場に伝えていく重要性 

221010工場内
日進工具の工場内

 

221010開発センター
日進工具の開発センター。生活振動も寄せ付けない環境で精度の高い超硬小径エンドミルができるよう開発に注力している

 浅岡 切削工具メーカーのようにおびただしい数の良品を安定的につくり続けるには社員のモチベーションも重要な要素になるかと思います。 
 後藤 これはとても重要なことで、まず、社員の給料は業界で一番高く――という方針です。機械ができる単純作業もさせません。人にしかできない仕事に集中してもらいます。 
 浅岡 素晴らしいですね。 
 後藤 ちょうど僕が入社した時はバブルがはじけた後ですが、ちょっとした経営危機があったんです。赤字を2期も続けてしまい、おおよそですが売上20億円の借金20億円。当時は従業員も35人ほど。銀行もソッポを向いているので、どうしたら生き残れるかと真剣に考えていました。同業他社が上場会社ばかりなので、同じ市場を狙っても良い結果が出ないのは分かっていましたから、小径工具に軸足を移しました。太径を全部切り離して、全ての資本を小径工具に突っ込んだのです。太径は売れているものも廃盤にしてしまったので当時は多くのお客様にお叱りを受けましたが、「会社の存亡にかかっているので何卒ご理解ください。小径だけは完璧に良いものを作ります。太いのは他メーカーでご購入し、これだけは買って下さい。」と頭を下げました。次第にしっかり利益が出るようになり、利益は投資に回すことを繰り返し実行していくと、売上20億円が100億円になりました。現在は利益率を落とさぬよう気を引き締め、値引き合戦には巻き込まれないようにしています。 
 浅岡 価格競争はブランディングの差別化ができないときに実行するイメージがありますから、そこでブランディングを確立していったのですね。日進工具さんは、日本の製造業では珍しいブランディング成功例だなと感じました。 
 後藤 製造業は自分たちで作っているものの価値をしっかりと市場に伝えていかなければならないと自負しています。 

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