安田工業 新規事業開発課が熱い! ~クリエーターを刺激する『Labonos』が製造工程を変える~

 

Labonosの注目点

Labonosu 楠氏
機械操作性について自信をみせる前任の楠室長

 前任の楠 幸裕さん(以下楠室長)にお話しを伺うことができた。

 楠室長は、「切削ならではの高精度、高品位が誰でも簡単に加工ができる点が『Labonos』の注目点ですが、それを実現する技術的な要素はソフトウェアです。特に機械操作については非常に簡単になりました。」と自信を見せる。

 従来のマシニングセンタでは、下記の手順が必要となり、ざっくりいうと少々面倒臭い部分が見え隠れする。

 (1)材料をどのように保持して加工をするか→「段取り」
 (2)どのような切削工具とホルダーで、どれくらいの長さ設定で加工するか→「工具セッティング」
 (3)どのような順番、加工方法(等高線、走査線など)の加工条件(回転数や送り条件など)で加工させるか→「加工プロセス」
 (4)どのようなプログラムであれば、加工プロセス通りに加工させることができるか→「CAM操作と加工プログラム」
 (5)加工プログラムで加工中に干渉が発生しないのか→「加工検証」

 つまり、マシニングセンタは誰でも操作ができるというものではないということなのだ。現在、製造業界も少子高齢化による熟練者の減少や、労働人口の減少に伴い、システム化による自動化の波が押し寄せている。

 楠室長は、「『Labonos』では、これらの課題を解決するためのノウハウを埋め込み、操作は極力自動化ができるようにこだわりを持って開発をしてきました。それが、われわれで命名したアプリ名『sonobaL』なのです。」と、アプリケーションについて触れた。ちなみにこの『sonobaL』は、『Labonas』を逆さに読んだもの。マシンとアプリが表裏一体であることを表している。音の響きも良いので、サクッと覚えられるところがGOOD! 
 
『sonobaL』の優位性は、上記に記載したマシニングセンタの面倒なところを以下に統合している点である。

 (1)「段取り」→:QRコードシステムとサポート配置・調整・追い込み機能
 (2)「工具セッティング」→:QRコードシステム
 (3)「加工プロセス」→:テンプレート機能
 (4)「CAM操作と加工プログラム」及び「加工検証」→:シミュレーションシステム

 つまり、この『sonobaL』によって、3Dプリンタの操作感以上の〝誰でも簡単に加工ができる〟が実現できたのだ。

Labonos 扉もラクラク
扉の開け閉めも場所を取らず、周囲のインテリアとも調和しやすいデザイン。

 「これからもますますの自動化を加速させ、完全自動化にこだわって開発していきたいと思っています。」と意気込みを示す楠室長。他にも〝深掘り要素〟がたくさんあるとのことだが、ものをつくるモトの世界に身を置いているだけあって、「口外できない技術要素もあるのです。」と笑った。

 他にも注目したい点は、〝デザイン〟だ。デザイナーの意向である、形、色味や光沢などを、忠実に再現するようにしているという。工作機械の角々しさとは異なり、丸みを帯びたシンプルな形。それでいて高級感があるクリア度と金属感のあるシルバーに加え、どこか温かみを感じさせるブラウンが、場所を選ばず配置できるデザインとなっている。

Labonos導入によるメリットとは

Labonos 異種材もばっちり
異材同士でもぴったり嵌め合う

 『Labonos』導入による大きなメリットは、①デザイン評価試作、②機能評価試作、③在庫保有をDX(デジタルトランスフォーメーション)で改革することだ。なにより、多様な樹脂素材に対応し、使用する材料によって装置を変更することもない。はめ合い形状加工では、異材同士でもぴったりと嵌合う。したがって繰り返し負荷のかかる部品などは、形状だけでなく品質や強度を確かめられる試作が可能であり、量産品と同質材料を使えば、強度の確認など量産品と遜色ないレベルで機能性を確認することができ、製作した部品はそのまま製品として使用することもできる。

ドール切削痕
切削痕のありなし。左は髪の毛部位がざらついているが、右は肌の質感が非常に滑らかだ

 もうひとつ、コスト面のメリットとして樹脂型が上げられる。金型と比較すると耐久性は劣るが短納期で製作でき、高精度加工が成形品に反映されるので小ロット製品の製作にもってこいなのだ。

 そして『Labonos』が効果を発揮するのが〝デザイン性を重視したモデル形状〟だが、意匠性・高度なディテールが要求されるものでも、高精度・高品位に出力する。キャラクターフィギュア業界では現在、フルデジタルプルーフ需要が高まっており、同時にその再現品質などのニーズも高まりを見せているが、今回、同社では3DSGデザイナーの大上竹彦氏とのコラボで高精細フィギュアモデルの切削加工チャレンジ企画が実現している。

Labonos 薄い!
こんなに薄いものまでできる

 写真にあるとおり、滑らかな質感、後工程では処理ができないような繊細なモールドも人手による処理は不要。3Dモデルを忠実に再現することができるのだ。

 同社では既存の部品を修理や交換のために在庫をし、保守用部品のために金型を長期保管するコストを無視できない課題としている。そこで同社では、部品データをデジタル情報として保管し、〝必要な時に必要な数だけ製作する〟という〝デジタルスペア〟の考えを推進している。『Labonos』の特長でもある、モデルデータを忠実に再現する高精度加工と、誰でも簡単に加工を行うことができる操作性、そして新たな部品の保守方法を実現してくれるというから頼もしい。

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