「加工ワークに国境なし!」イスカルジャパン 社長 岡田一成氏

 

 本年2月、イスラエルの切削工具メーカーであるイスカルの日本法人、イスカルジャパン(本社=大阪府豊中市)の新社長に岡田一成氏が就任した。岡田社長は、1994年にイスカルジャパンの設立と共に入社、翌年にはイスラエルにある本社工場に転籍し、その後、着々とキャリアを重ねてきた。

 イスカルは1952年、イスラエルの建国直後に創業をし、世界でも急成長を遂げている企業のひとつ。国内外における超硬工具メーカーからみると同社は後発になるが、独創的でユニークな工具群を多数市場に投入し、現在はIMCグループで世界シェア第2位の地位を誇る。岡田社長にお話しを伺った。



加工現場にコミットメント!

イスカルジャパンのオフィス
イスカルジャパンのオフィス
 ―イスカルジャパンは94年に設立されましたが、この25年間を振り返って感じたことはありますか。
 ―岡田 日本国内はかなり切削工具メーカーが多く、難しい市場ですが、果敢にシェアアップを狙っていました。エンドユーザー様はものづくりに対して厳しい目を持っていると同時に技術力の高い熟練工と呼ばれる方がたくさん存在する中で、外資の切削メーカーが日本に飛び込むことは、かなりチャレンジングだったと思います。この日本市場で安定して成長路線に乗れることが設立当時の最優先事項でした。お陰様で今では流通の皆様にも認知されるようになりました。
 ―日本市場の開拓への意気込みを教えて下さい。
 ―岡田 常に加工ユーザー様や機械加工現場での「高能率加工」、「生産性アップ」に対してコミットすることが、イスカル社の一貫した活動方針です。
 ―実行するための具体的なお考えは?
 岡田 先ずは有言実行です。売上実績の大きな部分を製品開発に還元投資をしています。その結果、イスカル社の新製品の数は、国内のどの工具メーカーよりも多いと自負しています。今日、各産業分野において、加工ワークに国境はありません。例えば、同じ加工ワークが国境を越えて加工され、供給されているなか、日本国内の生産性や切削条件、加工技術の物差しでは測れなくなっています。世界60か国以上で販売実績のあるイスカル社は、数多くの加工ワークにおいて実績と経験を有します。それが我々国内のお客様にも、有益であり、製品と情報を一体にした提案をする使命があると感じています。 
 ―多くの加工事例を有することが強みのひとつですね。
 岡田 イスカルグローバルで見ると、加工事例は他社とは比較にならないぐらいの案件数を持っております。この活用こそ、“イスカルだからこそできる”という貢献になり、エンドユーザーにお届けしたい。
 ―今年もUTS(ユーザーテクニカルセミナー)が開催されますが、毎年、ここで加工現場の実例が紹介され、貴重な情報が開示されます。実際の事例数というのはどのくらいなのでしょうか。
 岡田 UTSでは、成功事例をユーザー様自身で発表して頂いています。これらは、国内で蓄積されたものですが、それ以外に、イスカル全社では非常に多数の加工事例を有します。弊社ホームページでは、それらの一部を「INDUSTREALIZE」という産業別の加工ソリューションとして公開しており、お客様から重宝されております。弊社は既に確立された成功事例とソリューションを加工ワーク別、材料別等に分けて有しており、その数は前述の通り圧倒的な多さを誇っています。
 ―これは強みですね。
 岡田 すでに確立されている技術や事例を使うことなく、一からやり直すほど無駄なことはないと思います。われわれの持っている事例とソリューションは日本に限らずグローバルなレベルから引っ張ってきてお客様に届けるという、提案営業が必要でしょう。

国内シェア10%達成のために

豊富な工具群が掲載されている新製品カタログ
豊富な工具群が掲載されている新製品カタログ
 ―前回の記者発表の際に、目標値として国内シェア10%達成を掲げていましたが、秘策はありますか。
 岡田 確かに10%のマーケットシェア達成は容易な目標ではありません。ただ、この目標値を狙うこと自体が、重要となります。昨年は、お陰さまで前年比二桁の成長をすることができました。マーケットシェアを伸ばすには、製品力はさることながら、国内販売パートナー様(流通)との密接な関係が不可欠となります。
 ―流通の重要性についてのお考えは。
 岡田 前述の通り、弊社には、新製品の開発力、加工ソリューション、成功事例等を豊富に有しています。それらを加工ユーザー様にお届けすることが使命ですが、弊社の限られた営業だけでは国内の何万というエンドユーザー様には行き届きません。マーケットシェア10%達成のためには、弊社の活動を理解頂き、協力頂く流通の皆様との協業が不可欠となります。
 ―貴社一丸となって販売に注力している印象を受けます。
 岡田 イスカルジャパンの現状は、日本国内の販売網は、まだまだ隙間だらけです。われわれの製品というのは、通販サイト、もしくはカタログに載せて、すっと売れるような製品でもありません。お客様が使用されている工具を見つめさせて頂き、加工ワークに対して収益が上がるポイントを判断した上で、それに見合った工具を、見合った形で提案していかなくてはなりません。50人ほどの営業が、少数精鋭で効率よく動くための方策を模索しています。
 ―人材が持つ力を発揮するための方策はありますか。
 岡田 管理をすべき項目はたくさんあるのですが、管理手法、もしくは営業からの報告の受け方、報告のさせ方はさらに効率化できると考えています。業務のデータを、一つの大きなビッグデータとして、会社が蓄積していく。営業マンが50人いて、1人の営業マンが1日に3軒4軒を訪問し、レポートを書くと、だいたい1日に何百件という案件が出てきます。せっかく営業マンが動いているのに、そのデータが会社として活用できてないと勿体ない。昔と違って、営業マンのお尻を叩いて、もっとやれ、夜遅くまで仕事をしろというのは時代遅れですから、彼らが同じ時間の中で働いたデータを貴重なものとして会社がどれだけ生かせるのか、を考えています。

LOGIQから36点のアイテム登場! イスカルの開発方針とは!?

昨年開催されたJIMTOF2018で展示された「LOGIQ」は大きな注目を浴びた。
昨年開催されたJIMTOF2018で展示された「LOGIQ」は大きな注目を浴びた。
 ―新製品をどんどん市場投入されていますが、開発方針と有力製品について教えて下さい。
 岡田 イスカルの定義では新製品というと5年以内に発売されたものを指します。現在、『LOGIQ』から36点のアイテムが出ました。まさに“超新製品”です。この超新製品は、イスカル社が厳選した新製品。イスカル社の開発方針は、開発チームが新製品原案を、ハルパズ会長へ提案し、それを会長がチェックし、承認され、製品化されます。この集大成が4~6年のスパンをかけて新製品として世に出てくる。そこで今回出てきたのが『LOGIQ』なのです。先々月もイスラエル本社へ出張してきましたが、今後リリースされるであろう新製品の卵がすでに多く蓄積されていました。そのような環境から厳選され、市場に投入されるイスカルの新製品には、わたしたちも大変な期待と自信を持っています。
 ―トレンドを掴む工具についてのお考えは?
 岡田 LOGIQ新製品の主なテーマとしては、いくつかポイントがあります。ひとつは、防振機能を有する工具です。長年イスカルは突切り、溝入れ工具で高い評価を頂いてきましたが、深溝加工における防振機能を備えたウィスパーラインがそのひとつです。また、今後の加工トレンドとして、小切込み、高送りの要望がありますが、それらに対する工具もLOGIQシリーズで揃えもちます。ミーリングの小径工具のスローアウェー化も製品化しました。刃数を増やすことによる高送りの実現が狙いです。LOGIQ新製品は、スローアウェー工具、ヘッド交換式工具がメインとなりますが、それらを製品化、製造できるイスカル社の製造技術にも注目を頂きたいと思います。おそらく、弊社のスローアウェー、ヘッド交換式工具の生産技術は業界トップクラスだと自負しています。
 ―ありがとうございました。

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