恐怖! 洒落にならない

ピンポ―――――――ン。

一週間前の土曜日、早朝、まだ暗いうちにインターフォンが鳴った。
時計を見たら、朝4時をちょっと過ぎた頃だった。

誰だよ、こんな時間に! 

せっかく早起きをしなくていいのに、起こされた。
コメカミに怒マークを1000個付けたいほど気分が悪い。

その一方で、早朝4時に人様のインターフォンを鳴らす非常識なヤツがいるという紛れもない現実に直面したわたし。不気味な恐怖が込み上がる。

落ち着け、わたし。落ち着け!

泥棒は在宅確認にピンポンを押すと聞いたことがある。

ここで出なかったら、留守と思って自宅に侵入してくるかもしれない。勇気を振り絞り布団から這い出た。

巨大な鳥の巣と化した髪の毛を揺さぶりながら、スマホを握りしめ、「ふぁい」と思い切り低い声でインターフォン越しに応答する。なにかあったらすぐに110番に連絡してやる。

すると―――。
不気味なことに誰もいない。

こわい! こわすぎる!

110番ではなく、管轄の警察署に連絡をした。特に被害はないけれど、泥棒の在宅確認かもしれない。とにかく曲者がご近所を彷徨いているのは間違いないだろう。なにかあってからじゃ遅いのだ。

警察の人は「向かいます」と言った。
たしかに言ったのに、来なかった。

おそらく被害がないからだろう。でもね、ひょっとしたらイケメンの警官が来るかもしれないわ、と、穴のあいたヨレヨレのスェットから綺麗なジャージに着替えたのよ。巨大な鳥の巣頭にも櫛を入れて整えたというのに、誠に残念だ。

警察の時間泥棒ぶりに気分を悪くしたけれど、外は明るくなってきた。まだまだ机仕事が残っていたけれど、予定を変更して、その日1日、防犯強化に動いた。備えあれば憂い無しなのだ。

まずは手頃な防犯グッズを物色しに、その手の品揃えが豊富であろうハ〇ズに行った。もし、なにかあったらカラーボールをぶつけてやる。これだと曲者に目印がつくので警察官も追いやすいだろう。

と思ったら、最近、人を攻撃するものは、逆に犯罪に使用される可能性があるから売っていないとのこと。これも正論だけれど、とっさに防御する術がないことを知った。われわれは非力だ。ということで、大がかりな設備投資をするハメになった。

ただでさえ、時間の調節が難しい今日この頃。工事の日程などで仕事の時間を削がれたことは辛いが、もうこれで一安心だ。強力な防御になるのは間違いない。

安全は金で解決するしかないのは承知しているけれど、堅実実直可憐な、なんの落ち度もないわたしの実体経済に痛々しい爪痕を残した輩に憎しみが募る。

実はここ最近、詳細は伏せるが、治安が悪くなったことを実感していた。ご近所も同じような感想を持っており、警官のパトロールも増えたよね、と話をしていたばかりだった。

それから一週間。

帰宅途中、なにやら近所が騒がしい。たくさんの覆面パトカーが駐車し、警官がたくさんいるではないか。道路も渋滞している。

げっ! これは!
規制線が張られている!

民家で人が亡くなっていたとニュースで知った。どうやらその民家は民泊として部屋を貸していたとのことで、外国人が血を流して亡くなっていたとのこと。

早朝、何者かにチャイムを鳴らされたこととの因果関係は分からないけれど、怖過ぎるではないか。

わたしを含め、ご近所もナーバスになっており、防犯設備強化の工事車両や作業員にも、ご近所チェックが入る。大都会東京でありながら、近所の人が周囲に無関心ではない表れでもあるので、これはこれで心強い。

ところで、最近、民泊が増加しているが、トラブルも考慮しなければならないと思う。

気になるのは民泊施設なのに、看板が立っていないこと。
どうせなら、ラブホのように「民泊はこちら→」と、周囲に分かるようにして欲しいですね。