JIMTOFで見学した碌々産業のマシンが救世主! NH WATCHが初のオリジナル腕時計を発表 

質問に答える飛田氏
質問に答える飛田氏
 NH WATCH(代表=飛田直哉氏)が、3月2日、東京都内のPROP(港区南青山)で初のオリジナル腕時計となる「NAOYA HIDA&Co.NH TYPE1」を発表した。

 「20年ほど前は日本で腕時計をつくることは難しかった。スイスでつくろうかな、と思ったのですが、スイスでつくるにはフランス語ができないと難しい。移住してもコストがかかる等で、様々な手を探ってみたが思うようにいかなかった。最近になって日本でも若い時計師が増加し、一緒に組んだらできるかもしれないと思いプロジェクトを始めたのは5年前。日本で時計をつくることに決めました。」と飛田氏。

 コンセプトについて、「私は昔の時計が好きで、決して近代的なモダンな時計をつくりたいわけではなく、ヴィンテージのスタイルを求めた。ヴィンテージの時計はあまり大きくなく、35mm以下が多いのですが、個人的にはもう少し大きいほうが良い。そこで37mmの時計をつくろうと思った。」と話す。

カリカリッとした巻き味
カリカリッとした巻き味
 「37mmと決めたときに大きなムーブメントを探した。機械がぎっちり入っているものが好みであり、手巻きの時計が好きなので手巻きにしたのですが、37mmで中にぎっちり入っている手巻きの機械が既存では、なかった。そこで、ベースにある機械を改造することにしたのです。」

 そこで「バルジュの7750をベースにつくったらうまくいく。」と思い付いた飛田氏だが、どうも巻き切れたときの感覚が、ジャー、ジャー、ジャーとして好きになれなかった。「昔の懐中時計のようなカリカリッとした巻き味にしたくて、7750のベースプレートとリンテンスだけを残して、メインブリッジ、バランスブリッジと一番大きいコハゼ回りを再設計した。これでクリスプ感のある巻き心地の良い時計ができたんです。」と妥協のない機械へのこだわりを見せてくれた。

JIMTOFでみた碌々産業のマシン

碌々産業との出逢いにより難加工の悩みを解決
碌々産業との出逢いにより難加工の悩みを解決
 37mmのケースで腕時計をつくりたいと思っていた飛田氏。「今回発表した時計はステンレススチール素材の種類である904Lを使っていますが、スイスの時計メーカーは316を使っています。904Lの良さは耐腐食性、耐久性が非常に良いところですが、コストがかかり過ぎることがデメリットだった。日本でも904Lはダメだ、と断られていたのですが、あるとき、東京ビッグサイトで開催された“JIMTOF(日本国際工作機械見本市)”で、微細加工機をつくっている碌々産業さんと出逢った。」と碌々産業(社長=海藤 満氏)との出逢いについて語った。

NH TYPE 1B
NH TYPE 1B
 ちょうどその頃、碌々産業もアートや高級品等のものをつくるサポートを考えていたところだったという。904Lはクロムの含有量が多いので、その分難加工になる。高級時計のロレックスはこの904Lを使用しているとのことだが、高価格なのも当然だろう。

この難削材を超微細かつ美しく加工するためのノウハウを持っていた碌々産業との出逢いは、渡りに船だったようだ。

「海藤社長の情熱を知り、意気投合しました。碌々さんと一緒だったら、既存のケースメーカーやサプライヤーではできないものができるかもしれない。」

数字にもこだわりの美しさが!
数字にもこだわりの美しさが!
 散々断られ続けた904Lの加工は、従来通りの鍛造で何度も重ねてつくるやり方ではなく、超微細&超高速微細加工機で削る手法に切り換え、これによりケースの自由度は高くなった。リューズも好みのオーバーサイズを削った。ピンバックルも904Lからの削りだしで、飛田氏いわく、「世界で一番高価なステンレス製ピンバックルだと思います。シンプルな形ですが、つく棒は削りだしならではの膨らんだ立体感がある。」と満足しつつも、時計の針も「もっとグラマーな針をつくりたい!」との思いがあったという。なかなかな難加工であるが、そこでも微細加工機を使って細いものをブレずに、曲がらず、折れずに削る方法が見つかった。このノウハウは当然ながら秘密とのことだが、これを受け取って、表面、針を磨いて、ブルースチール(青焼き)を加えて、先端を曲げ、分目盛りにぴったり合うよう仕上げる。価格は180万円(税別)

 この日は時計を専門媒体の記者やライターが多く集まっており、「奇蹟を目の前に再現化されている。その日に立ち会わせていただいた。」との声があがっていたのが印象的だった。

moldino_banner

 

 

intermole2024_大阪