不二越が超硬素材を内製化 ~全てを一新した新超硬ドリル「アクアREVOドリル」とは!?~

JIMTOF2018で満を持して初お披露目
JIMTOF2018で満を持して初お披露目
 不二越(社長=薄田賢二氏)が「JIMTOF2018」開催初日の11月1日、超硬素材を内製化すると発表した。同日、この新超硬材の開発により、ドリルの飛躍的な性能向上に貢献する新超硬ドリル「アクアREVO(レボ)ドリル」を発表し、東京ビッグサイト会議棟で説明会を開いた。

 同社は、1928年、切削工具の国産化を目指し創業。その後、切削工具の素材となる特殊鋼の内製化を開始して以来、材料から製品に至る切削工具の一貫生産体制を構築してきた。

 特殊鋼から一貫生産をする工具メーカーは世界でも数が少ないが、今回は超硬素材から超硬ドリルを一貫生産するとのことで、全てを一新した新超硬ドリル「アクアREVOドリル」は、“力の入った新商品”だという。

 近年、切削加工条件の多様化から、超硬工具の需要が拡大する中で、同社では2015年に超硬材料開発プロジェクトを立ち上げ、材料開発、製造技術開発に取り組み、独自のノウハウを確立している。今後は、新しい高性能・高品位な超硬素材を安定供給することで、超硬ドリルの性能向上に貢献し、ユーザーの生産性向上とコストダウンに寄与する方針。

 超硬工具は生産性向上のニーズに対応するため、高速・高送り加工が要求され、それに伴い素材・材料にも高靱性、耐摩耗性が要求されているが、今回の内製化により、工具部門と協働し、切削試験での性能確認を適宜進め、最適性能を実現している。同社独自の成分設計と、金属炭化物の粒度、均一性を厳しくコントロールした焼結技術と、硬さと靱性を兼ね備えた新素材の開発で、製造条件の最適化も図り、製品品質も向上した。また、シンターHIP炉をはじめとした最新鋭の設備による生産ラインを構築し、高品質な超硬素材を製造する一方で、同社独自のロボットシステムによる自動化ラインを導入し、品質の安定化、大幅な生産性向上を実現している。

 今回の投資では、新専用工場の建設、押出成形機・シンターHIP炉をはじめとした最新の製造・検査設備の導入などで、投資金額は約20億円。

 

開発に至った経緯と工具を取り巻く環境変化への対応

説明する北山工具事業部長
説明する北山工具事業部長
 北山 恭 工具事業部長は、「エンジン車(HV、PHV含む)はもうしばらく伸びるだろうが、EV化が進むうえ、軽量化、電動化による材料の変化も見込まれる。こうしたことを背景に他社に先駆け新たな需要に向けた開発を行っていかなければならない。」と工具を取り巻く市場環境の変化について話し、工具部門の中期戦略に触れた。それによると、「ラウンドツールに重点をおいた商品戦略、原価低減により世界シェアを伸ばし売上げ・利益を拡大する」と説明した。

 同社は、2008年と比較して2016年までに売上は5倍伸長(売上5倍・シェア4倍)している一方、汎用ドリルの伸びは2016年以降、鈍化している。そのため、「新汎用ドリルの開発が私どものテーマとなった。現在加工の要求は高まってきており、加工にさらなる革命を起こす必要があると考えた。それには圧倒的な加工性能を追求しなければならない。工具の3大要素は材料、形状、コーティング。材料はこれまで材料メーカーから購入していたが、高度化する市場からの要求に応えるには材料の開発が不可欠と考えた。弊社の長い歴史にもあるとおり、不二越の強みは素材部門を持っていること。REVOブランドのコンセプトに基づき超硬素材を自社で新開発、製造し、今回のREVOドリルの発売に結びついた。」(北山工具事業部長)

硬さと靱性を両立した新超硬素材はロボットを使った自動化ラインで安定品質!

越濱執行役員マテリアル事業部長
越濱執行役員マテリアル事業部長
 ハイス工具を材料から一貫生産している不二越だが、この分野では国内40%のシェアを誇っている。越濱哲夫 執行役員マテリアル事業部長(以下越濱マテリアル事業部長)は、「昨今は切削条件の多様化もあり、超硬工具のニーズも高まってきている。不二越も革命を起こしていかなくてはならないぞ、という意気込みのもと、2015年に“超硬素材開発プロジェクト”を立ち上げ開発を進めて今日に至っている。」と話した。

 工具の革命につながる材料をつくっていくことがマテリアル事業のミッション。コンセプトは超硬工具が要求する生産性の向上だ。

 越濱マテリアル事業部長は、「高硬度、高送り加工ということに耐えうる材料というと、硬くて靱性があることになる。硬いとタフネスは反比例する性能なのでこれらを兼ね備えた材料を造って欲しいという要望を受けて開発を進め、今回のREVOドリルに相応しい材料が出来た。工具部門と共同で開発をしているので、工具に要求される切削性能を何度も何度も繰り返し評価をし、独自の設計と、金属炭化物の粒度、均一性を緊密に厳しくコントロールする焼結技術を開発したことによって、相反する特性をもった材料を開発することができた。また、製造条件も品質もより厳しく管理することで品質の安定化を図っている。」と材料研究について述べ、一方、生産技術面では、「不二越はロボットを核とする総合機械メーカー。製造ライン各所にロボットシステムを導入しており、自動化ラインを構築している。品質の安定化と少ない人数で製造できるメリットを生かして生産性の向上を達成している。」と優位性を示した。

これが「アクアREVOドリル」だ!

 今まで多機能・工程集約、高効率、新しい加工法といった3つの観点で開発を進めてきた不二越。その結果、「超モノづくり部品大賞」(主催:モノづくり日本会議・日刊工業新聞社)では、「アクアドリルEX フラットシリーズ」が2013年超モノづくり部品大賞機械部品賞、同じくその2年後に、「アクアドリルEXオイルホールロング」(2015年超モノづくり部品大賞奨励賞)、直近では2017年、「HyperZタップシリーズ」(2017年超モノづくり部品大賞機械部品賞)を受賞したことでも分かるとおり、多彩なシリーズを拡充し、超硬ドリルのマーケットシェアを拡大してきた。

 先述の通り、材料部門を社内に有する不二越独自の技術を結集し、従来は両立が難しかった硬さと靱性を兼ね備え、耐摩耗性に優れた新素材を開発したことにより、これまでにない高品位な素材の社内一貫生産を開始した「アクアREVOドリル」の革新性は、次の通り。

●新形状
 一般的に超硬ドリルで採用されているフック形の切れ刃形状ではなく、直線切れ刃形状を採用することで、切削時の応用力を分散。あらゆる加工条件で切り屑形状が安定化し、これまでにない高い生産性を実現した。

●新コーティング
 耐酸化性と耐摩耗性に優れた2種類の膜種(AlTi系膜・AlCr系膜)をナノレベルで積層し、強靱な膜を成膜する“REVO-Dコーティング”を新開発。低摩擦性を向上させる超平滑化処理とともに、これまでにないスムーズな加工を持続する。

関口工具事業部技術部長
関口工具事業部技術部長
 関口 徹 工具事業部技術部長は、「アクアREVOドリル」の特長について、「圧倒的な耐久性と安定性で、他社従来品に対して2倍以上の長寿命化を実現した。高速切削や高送り加工を可能にし、加工時間も半減する。また、生材から高硬度材まで幅広い材料に能率を落とさず高品位加工を実現するという汎用性に優れた工具。一番の特長は、高能率、多用途はもちろん、回転数、送りを挙げても長寿命であること。自動車部品、炭素鋼、ステンレス、金型材、耐熱鋼など、広い範囲で対応しても工具の寿命が長いので広範囲のお客様に対応できる工具だと自負している。工具の3大要素は、材料、形状、コーティングだが、アクアREVOドリルは、この3要素の全てを一新している。従来は形状、コーティングを研究しても、超硬材を購入しなければならず、研究開発にも限界があったが、超硬素材の内製化によってわれわれの技術を惜しみなく投入できるようになった。これを形にしたのがアクアREVOドリル。」と優位性を示した。

 同社では、今後の取り組みとして、工具部門のニーズに対応したオリジナル高性能材種の開発を継続するとともに、スカイビングカッターなど、ラウンドツール以外の超硬合金素材の開発も進める。あわせて、超硬素材の外部販売も検討していくとしている。

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